呼吸器の病気

猫の横隔膜ヘルニアの手術を徹底解説。成功率や費用は?

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横隔膜ヘルニアとは、肺や心臓のある胸部と胃や腸のある腹部を隔てる横隔膜に穿孔または欠損が起こり、腹部の臓器が胸部に侵入してしまった状態のことです。

完治には、手術で穴をふさぐ必要がありますが、実はそう簡単な話でもありません。

横隔膜ヘルニアの原因や猫の状態によっても手術ができるかどうかがかわってきます。

そこで今回は、猫の横隔膜ヘルニアの手術について、原因や症状と合わせて成功率や寿命を含めて詳しく解説いたします。

横隔膜ヘルニアの症状

ヘルニアから飛び出した腹部の臓器が、胸の臓器を圧迫することで、心臓などの循環器、あるいは肺などの呼吸器を圧迫することで呼吸困難を起こします。
元気がなく、うずくまった状態がつづくこともあります。
ときには意識を失ってしまうようなショック状態になることもあります。
胃や腸などの消化器が圧迫されて、食欲がなかったり、食べても吐いてしまう、下痢をするといった消化器症状がみられることもあります。
また、腹部を痛がり、軽く触っただけで痛がるような様子をみせることもあります。
肝臓は通常であれば横隔膜の下にありますが、それが上に飛び出して圧迫されると肝臓が障害されますし、脾臓が入り込めば脾臓が壊死する場合もあります。
逆に、生まれつきの横隔膜ヘルニアでは、目立った症状がないことも多くあり、身体検査や他の病気の際に見つかることもあります。
時折、腸の流れが悪く、栄養の吸収が悪い場合などは発育不良をおこしてしまうケースも見られます。

横隔膜ヘルニアの原因とそれぞれの対処法

猫が横隔膜ヘルニアになるには、3つの原因があります。

先天性横隔膜ヘルニア(心膜腹膜横隔膜ヘルニア)

母猫の体内で形成されるはずの横隔膜が十分に発達する前に生まれてしまい、一部欠損、またはほとんど無い状態で生まれてきてしまった状態です。
生まれた時から心臓を覆う心膜と腹部の臓器を覆う腹膜がくっついていることがあり、すでに肺や心臓を圧迫している可能性があります。
また、本来の存在場所でないところにある臓器は、そのまま違う場所にくっついて癒着してしまいます。
このような場合は、手術をしても肺が膨らまず、心機能も低下しているため、手術のリスクが高く、手術をせずに経過観察することが多いです。
心機能が低下していると手術自体に耐えられず、手術中に亡くなってしまうこともあるからです。
手術が可能であれば、開腹して内臓をあるべき位置に戻し、横隔膜の穴をふさぎます。
生まれつき横隔膜がほとんど無いような場合は、治療専用のネットを使って、横隔膜の代用とします。
無症状のまま何年も元気に過ごすこともありますが、影響が出てくれば、呼吸困難や食欲不振など症状が現れます。
症状が出てしまったら、何も処置せずにいると、数週間から数か月で命を落としてしまいます。

外傷性横隔膜ヘルニア

外傷性で一番考えられることは、交通事故や高所からの落下です。
外傷性横隔膜ヘルニアは、横隔膜だけが損傷していると言う事は少なく、他の内臓機能の確認をするために検査が必要です。
強烈な勢いで内臓が胸部に流れ込むため、心肺停止やショック死の可能性もあり、九死に一生を得たといえる状態で、予断を許しません。
外傷性の横隔膜ヘルニアの場合、事故から1週間以内と事故から1年以降は手術のリスクが非常に高くなります。
事故から1週間以内は、他の臓器にも影響を受けていることもあり、全身状態が悪いことも多いからです。
そのため、一般状態が落ち着くまで酸素室で呼吸を楽にしてあげたり、内科的治療で手術が行える状態になるまでタイミングをみる必要があります。
焦って手術を行うと手術中に亡くなってしまうこともあります。
かといって、手術せずに放置すると、臓器同士が癒着してしまうため、手術が非常に難しくなります。
ベストなタイミングで手術をする必要があります。

食道裂孔横隔膜ヘルニア

横隔膜にはもともと穴が空いている部分があります。
それは、食べ物を口から胃へ送る食道を通すための部分です。
食道裂孔の横隔膜ヘルニアは、この部分から穴が広がることで起こります。
最初から空いている穴の周りはどうしても弱いため、そこから腹部の食道や胃が侵入してしまうことで起こります。
ヘルニア孔の大きさや原因、入り込んでしまった臓器やその程度の違いにより症状は異なります。
少しずつ、隙間から食道や胃の周りの膜が入り込んでいき、腹部の臓器がひきつり、場所や形が変わることで消化や食べ物の移動に異常が起きてきます。
十二指腸や小腸で消化物が溜まったり詰まったりして下痢や便秘が起こりやすくなります。
傾向としては、「食事の後に良く吐き戻す」「食が細い」など、食事に問題がある猫に多く発症し、食道炎や食道拡張症を併発していることが多く見られます。
エサを飲みこむ時に辛そうだったり、食べた直後に未消化の状態でそのまま吐きだすことが増えた時は要注意です。
食欲が減少し体重が落ちる、元気がなくなり動かなくなるなどの症状が出ます。肩で息をするようになるとかなり辛い状態だと言えます。

横隔膜ヘルニアの手術の成功率は?

横隔膜ヘルニアの手術はまず、「手術ができる状態か」ということが重要になってきます。
執刀医の経験や技術が大きく関わるのはもちろんですが、猫の体力や生命力が一番問題です。
手術して普通の生活が送れるようになるまでの成功率約6割と言われています。
ただし、これには横隔膜ヘルニアが発覚した時の猫の状態が大きく関係してきます。
状態によっては、手術中や術後に亡くなってしまう可能性もあります。
手術はかえって危険になり、また手術を行っても回復が望めないこともあります。
そのため、ヘルニアが軽度で呼吸困難などの症状が出ていない場合には、手術は行わず、様子を観察しながら状態を見ていく場合も多いです。
ただし、手術を行わない場合、臓器の状態によって急変、他の弊害などのリスクは常に抱えていかなければなりません。

横隔膜ヘルニアの治療って何があるの?

横隔膜ヘルニアの完治のための治療は、基本的には穴を塞ぐ外科手術が必要になります。

外科治療

手術

手術は、気管チューブを挿入して気道と呼吸を確保して、吸入麻酔下で行います。
横隔膜の整復はその穴の状態や場所にもよりますが、開胸手術、または開腹手術によって臓器を元の位置に戻し、横隔膜を縫い合わせます。
状態にもよりますが、手術自体も難しいですが、どちらかというと肺や心臓が圧迫されていることが麻酔の大きな障害となり、呼吸管理、麻酔管理が非常に難しくなります。
手術中の死亡の可能性も非常に高いです。

術後管理

横隔膜ヘルニアの手術後は、術前と体の状態が大きく変化しているため、術後管理が非常に重要です。
手術ができたからといってかならず元気になるというわけではありません。
術後の数日は酸素室に入り、集中管理が必要です。
呼吸の状態や、血圧、元に戻した臓器が正常に機能するかなどを観察します。
数日間は、急激なショック症状を起こす危険性もあります。
状態が落ち着いてくれば、酸素室から出て、普通の入院室へ、食欲も出てくるようなら、その後3~7日ほどで退院できるようになります。
退院できたとしてもしばらくは安静が必要になります。
よほど活発な子でなければ通常の生活でも大丈夫ですが、高所からの飛び降りなど胸部に圧力がかかる行動はしばらく控える必要があります。
多頭飼育などの場合は、しばらくは隔離をしておくなどの配慮も必要です。

経過観察

ヘルニアが軽度で呼吸困難などの症状が出ていない場合や、高齢や全身状態の悪化が著しい場合は、死亡率が高くなりますので、手術は行わず、様子を観察しながら状態を見ていく場合もあります。

横隔膜ヘルニアの治療する場合の費用は?

横隔膜ヘルニアは、手術もそうですが、その前後の管理が大変ですので入院費も高額になります。
家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査(平成27年度)を参考にすると、手術費用は平均的に50.000~100.000円です。
入院費や麻酔代、モニター料なども含めると200.000~300.000円と高額になることが多いです。

横隔膜ヘルニアを予防する方法

後天的は横隔膜ヘルニアは交通事故などの外傷が多いので、室内での生活を徹底し、交通事故を避けることが重要です。
生まれつきの横隔膜ヘルニアを防ぐことはできませんので、常に横隔膜ヘルニアを念頭に置いて、何か症状に変化があればすぐに診察を受けるようにしましょう。

さいごに

横隔膜ヘルニアは原因や状態によって手術をしたほうがいいのかどうか非常に迷う病気です。
良かれと思って手術をして、亡くなってしまったら悔やんでも悔やみきれません。
本当に手術が必要な状態なのか、危険があっても手術に踏み切らなければいけない状態なのかを自分で判断するのは非常に難しいと思いますので、かかりつけの獣医師とよく相談し、猫にとってより良い決断をしていただければと思います。





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