「動物病院で猫の心臓が大きいと言われた。これは心臓肥大ということ?」
「猫の心臓が肥大していて調子が悪い。どんな治療をすればいいの?寿命はどのくらい?」
このような疑問はありませんか?
動物病院で飼い猫の心臓が肥大していると指摘されたら、「何が原因なのだろう?」「治すことができる病気なのだろうか?」と心配になりますよね。
心臓肥大とは、「心臓の壁となる筋肉の厚みが正常よりも増している」ことを言うのですが、それが病的な場合は“肥大型心筋症”と診断されます。
あまり聞き慣れない病名かと思いますが、実は猫の心臓病の中で最も発生頻度が高い病気です。
そこで今回は「心臓肥大とはどういう状態なのか?」、「猫の肥大型心筋症とはどんな病気なのか?」について解説したいと思います。
この病気をご存じない方、聞いたことがあるけれどもっと詳しく知りたいという方はぜひご一読下さい。
目次
猫の「心臓が大きい」は病気のサイン?
動物病院で「猫の心臓が大きい」と言われた場合、“心臓拡大”と“心臓肥大”という2つの意味があります。
似たような言葉ですが、意味している内容は全く異なりますので、誤解のないように解説していきましょう。
心臓拡大とは?
心臓拡大(心拡大)とは、胸のサイズ(胸郭)に比較して心臓が占める割合が大きいため、「心臓が大きく見える」という意味になります。
これは通常、胸のレントゲン検査で評価するのですが、心臓が拡大しているからといって必ずしも心臓病であるとは言えません。
レントゲン撮影時に猫が動いて体が曲がってしまうと角度によっては心臓が大きく見えることがありますし、点滴などを行っていると心臓に流れる血液が多くなり、心臓が膨らんで見えることがあります。
一方で、心臓の壁が薄く伸びて元々の心臓よりもサイズアップしてしまう“拡大型心筋症”と呼ばれる病気もあります(猫では稀)。
もし心臓拡大がみられたら、心臓病か否かを調べるために心臓の超音波検査を行う必要があります。
心臓肥大とは?
心臓肥大(心肥大)とは、心臓の壁となる筋肉の厚みが正常よりも増していることを言います。
これは心臓の超音波検査でしか判断することはできません。
猫で顕著な心臓肥大が見られた場合、肥大型心筋症の可能性が高くなります。
猫の肥大型心筋症とはどんな病気?
もし動物病院で猫の心臓が肥大していると言われたらなら、“肥大型心筋症”と呼ばれる病気の可能性があります。
心筋症は、肥大型心筋症、拘束型心筋症、拡張型心筋症と大きく分類されますが、中でも肥大型心筋症が最も多く猫に見られる病気です。
それでは肥大型心筋症の病態、原因、症状、診断方法について解説していきましょう。
肥大型心筋症の病態
肥大型心筋症は、左心室(ときに右心室)の筋肉が異常に大きくなってしまい、左心室が十分に広がることができなくなってしまう病気です。
左心室が上手く機能しなくなる状態を左心不全というのですが、左心不全になると、肺から流れてくる血液が滞ってしまったり、全身に上手く血液を循環することができなくなったすることによって様々な症状を引き起こします。
肥大型心筋症の原因
なぜ猫が肥大型心筋症を発症してしまうのかについてはまだ分かっていないことも多いのですが、一部の猫種(メインクーンやラグドール)では遺伝的な要素が関係していると言われており、このケースでは診断時の年齢は2歳前後と若齢であることが知られています。
またアメリカンショートヘアやノルウェージャンフォレストキャットも好発する猫種として知られていますが、純血種に限らず雑種猫でも発症します
なお、発症年齢としては中齢の猫が多いですが、若齢から高齢まで幅広く見られます。
肥大型心筋症の症状
肥大型心筋症になるとどのような症状が引き起こされるのでしょうか?
無症状
肥大型心筋症の恐ろしいところは、症状が特に見られないままひっそりと進行しているというところにあります。
ある研究では全く症状の無い猫を検査したところ、約15%が肥大型心筋症と診断されたという報告がでています。
動きが鈍い
心筋の肥大が進行してくると、血液の循環が悪くなるため、激しい運動を嫌うようになります。
呼吸が苦しい
心臓から血液がうまく駆出できなくなると、肺水腫や胸水という病態に陥り、呼吸が苦しくなることがあります。
呼吸が苦しくなるとじっと寝ていられず、ずっとお座りの姿勢をとったり、口を開けてパンティング(犬のようにハッハッハッという呼吸)したり、鼻の穴を広げるような異常な呼吸を起こすようになります。
突然腰が立たない
肥大型心筋症になると心臓のポンプ機能が低下するため、心臓内に血液が淀んで血栓ができやすくなります。
この血栓が血流にのって、末梢の動脈につまってしまう病気を“動脈血栓塞栓症”といいます。
動脈血栓塞栓症になると、足に行く血流が遮断されるため、突然腰が立たなくなってしまったり、肉球の色が青紫色に変化します。
また動脈血栓塞栓症は非常に強い痛みを伴うため激しく鳴いたり、口を開けて呼吸が速くなったり、体を触るのを嫌ったりします。
失神する
不整脈から失神し、突然意識を失って倒れてしまうことがあります。
突然死する
今まで元気であった猫が突然亡くなってしまった場合、調べてみると実は肥大型心筋症を起こしていたということがあります。
肥大型心筋症の診断方法
肥大型心筋症の診断には“心臓の超音波検査(心エコー検査)”が必要不可欠です。
この検査で左心室の壁の厚みを測定し心筋の肥大の程度を判断したり、左心房が異常に大きくなっていないか、血栓が作られていないかなどを確認します。
またこの検査で胸水がたまっているかどうかも分かります。
またX線検査(レントゲン検査)で、肺水腫や胸水が見られないかを確認したり、
心電図検査によって不整脈の有無、血圧測定によって高血圧の有無を確認します。
肥大型心筋症の治療方法
猫の肥大型心筋症の治療法は、猫の状態によってどの薬を使用するかが変わってきます。
ここでは①心不全の症状が見られない(無症状)ケース、②胸水や肺水腫などの心不全の症状が見られているケース、③大動脈血栓塞栓症を併発したケースに分けて解説したいと思います。
無症状の場合
心筋症と診断されたなら、心臓の負担を軽くするために血管拡張剤(ACE阻害薬)を使用します。
これは心筋症の治療のベースになります。
そこに、頻脈が見られればβ遮断薬を使用したり、左心房が大きく今後血栓塞栓症を起こす危険があると判断された場合は、抗血栓薬を併用したりして、個々の状況に応じて薬を調整します。
心不全の症状がある場合
肺水腫や胸水などの症状が表れて呼吸困難である場合は、酸素吸入を行いながら、利尿剤によって循環している血液量を制限し、心臓の負担を減らします。
また、胸水であれば強制的に抜去することも行います。
内服薬の調整は、無症状の時同様、血管拡張剤であるACE阻害薬をベースに、猫の心臓の状態によって追加します。
大動脈血栓塞栓症を発症した場合
梗塞性疾患は非常に緊急性の高い病気で、一刻も早く血栓を溶解させないと命に関わります。
診断後すぐに血栓溶解剤や抗血栓を使用し、薬循環の回復を期待します。
肥大型心筋症の寿命・予後
肥大型心筋症の猫の余命に大きく関わるのが、「左心房が大きいかどうか」という点と言われており、左心房が大きくなった猫では生存期間の平均が7.5ヵ月であったのに対し、そうでない猫では10年以上生存することができたという報告があります。
また左心房の大きさ以外にも、遺伝性のものかどうか、心不全の症状があるかどうか、高血圧を伴っている場合かどうか、動脈血栓塞栓症を起こしているかどうかによっても余命は変わります。
特に動脈血栓塞栓症は予後不良で、発症してから短時間のうちに血栓を溶解させることができないとそのまま命を落としてしまう恐ろしい病気です。
さいごに
猫の肥大型心筋症は症状が出たときには相当病気が進行していることが多く、早期発見が難しい病気です。
またあらかじめ心臓の肥大を予防する手段もありません。
そうなると、定期的な健康診断が唯一の自衛策となります。
もし飼い猫の兄弟がすでに心筋症と診断されたり突然死しているような場合は、無症状でもぜひ一度猫の心臓超音波検査を実施してもらうことをおすすめ致します。
「動物病院に連れていきたいけど治療費はどのくらいかかるんだろう?」
「愛猫の病気を治してあげたいけど高額費用を支払う余裕がない…」
という飼い主さんはとても多いです。
動物病院で治療する場合、病気によっては10万円以上かかってしまう場合もあります。
動物病院で治療すれば助かった命は実に多いです。
経済的な問題で愛猫の寿命を縮めないためにも愛猫が元気なうちにペット保険に加入することが大事になります。
でも「ペット保険っていうけど、どういう保険があるの?」という疑問も出てくるかと思います。
ペット保険の加入に迷った場合には、ペット保険の一括資料請求がおすすめです。
複数のペット保険の資料を比較することで「あなたと愛猫にとって一番ベストの保険が分かる」というメリットもあります。
利用は無料です。詳しくはこちらをご覧ください。
>>>ペット保険の一括資料請求を試しに見てみる(無料)<<<