感染症

猫のひっかき病って何?症状や治療方法とは?

投稿日:2018年6月24日 更新日:

「猫ひっかき病」という病気をご存知でしょうか?

名前からして猫に引っ掻かれることによっておこる病気なんだろうなぁ、という事は容易に想像がつくと思うのですが、実際にどのような症状が出るのか、引っ掻かれたら必ず感染してしまうのか、どのように対処したら良いのか、など詳しいことはあまり知られていないのではないでしょうか?

猫を飼われている飼い主さんや、小さいお子様がいるご家庭や、野良猫にひっかかれてしまった!というような場合心配になると思います。

そこで、今回は猫ひっかき病について解説していきたいと思います。

猫ひっかき病とは

その名の通り、猫に引っ掻かれることが原因で、炎症が起き、リンパ節の腫脹を起こす、人獣共通感染症です。
猫ひっかき病は、実は猫のひっかき傷だけでなく、噛まれた時にも発生します。
症状は、ひっかかれたり、噛まれたりした後すぐ出ることもあれば、数週間経ってから現れる場合もあります。
症状の発現までに時間がある場合、本人さえ、噛まれたり、引っ掻かれたことを忘れていることが多く、病名の特定までに時間がかかることがあります。
人間以外の動物にはほとんど症状を引き起こしません。
季節では夏から秋で多くみられます。
アメリカでは小児における発症が多いとされています。
日本では子供だけに限らず、3.40代の主婦層にも多く発症していますが、これはかかりやすい年齢があるというわけではなく、生活スタイルによるものと考えられます。

猫ひっかき病の原因

1992年にBartonella henselaeというグラム陰性、多形性単桿菌が主要な病原体と判明しました。
たった26年前にやっと原因菌が特定されて病気なので、あまり認知されていないのも当然化もしれません。
猫が自然病原巣で、猫の体内では赤血球の中に存在しています。
この菌は、猫(特に子猫)の血液、口腔粘膜、目ヤニ、ネコノミなどから検出されるありふれた菌です。
日本国内では、5~15%の猫が保菌しているとされています。
B. henselaeの日本の健康人での抗体保有率(過去に感染した証拠)は4.5%に対し、獣医師では11.0%~15.0%と、獣医師の抗体陽性率が高いです。

猫ひっかき病の感染経路

人への感染経路

猫ひっかき病は、その病名が示すように主に、猫に引っ掻かれて感染します。
引っ掻かれるだけではなく、噛まれても同じく感染する可能性があります。
引っ掻かれることで感染するという事は、猫の爪に感染源があるという事です。
猫ひっかき病の原因となるバルトネラ菌は、通常は猫の赤血球の中にあります。
バルトネラ菌に感染した猫の血液を猫ノミが吸い、猫の皮膚の上で菌を含んだ排泄物を排泄します。
猫がグルーミングをする際に、排泄物が歯や爪に付着、汚染させて、人へ感染させると考えられています。

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猫から猫の感染経路

ネコノミが重要な媒介となっています。
感染猫の血液を吸ったノミが被毛の上で排泄し、猫同士がお互いの体をなめ合うことで感染した排泄物を摂取し、猫の体内で増殖します。

猫ひっかき病の疫学

人の感染状況

わが国での猫ひっかき病患者は、患者の60%以上が女性で、子供や10代と30.40代の女性に多発する傾向があると報告されています。
菌が特定の年齢や女性に感染しやすいという事ではなく、この年代の女性は、飼育や世話などで猫と接触する機会が多く、引っかかれる機会も多いためと考えられます。
また、猫ひっかき病には、季節性があり、秋から冬にかけて多発します。
この理由としては、夏のネコノミの繁殖期に伴い、B. henselaeに感染した猫が増加し、その後、寒い時期になると猫は室内にいることが多くなるため、飼い主との接触が増えるためとされています。
また、春から夏にかけて誕生した子猫をペットにする時期が秋に多いため、人はこの時期に猫から受傷する機会が増えると考えられています。
また、原因となる猫の多くは1 歳未満の子猫が圧倒的に多いです。
この時期の子猫は、遊びでじゃれているつもりで引っ掻いたり噛んだりしますので、飼い主が負傷する危険性自体が高いからという理由と、外から子猫を拾って買い始めた直後はノミに寄生されている確率が高いためと考えられます。

猫の感染状況

我が国での飼育猫を対象とした調査では、5~15%が保菌しているとされています。
特に、南の地方や都市部の猫、3歳以下の若い猫が高いことがわかっています。
西日本に多く、北海道や東北地方からの報告は稀です。
また、室外飼育の猫や、ノミの寄生のあった猫では、抗体陽性率が有意に高かったことが判明しています。

猫ひっかき病の症状

猫ひっかき病に人が感染した場合は、通常、数日〜数週間の潜伏期のあと、いくつかの症状が現れます。

定型的な猫ひっかき病の症状

皮膚(傷口)の症状

猫にひっかかれると、ひっかかれた直後から数時間で、ひっかき傷が赤くなったり腫れたりします。
その後、3~10日目に菌の侵入部位(多くが、手指や前腕)に虫さされに似た、赤い小さな5ミリくらいまでの大きさの発疹が出て来ます。
化膿や潰瘍に発展する場合もあります。
その後は、傷口にかさぶたが出来てきます。
多くはこの段階までなった後、自然に治っていき、ひっかき傷も目立たなくなっていきますが、感染症が悪化してしまう場合もあります。

リンパ節の症状

初期病変から1.2週間後にリンパ節の腫脹が現れます。
一般に一側性で、鼠径部(そけいぶ:足の付け根のリンパ節)、腋窩(えきか:脇の下のリンパ節)あるいは頸部リンパ節に多く現れます。
腫れは、大きいものだと、鶏の卵大ほどになる場合もあります。
押すと痛みがあり、硬くなっていることがありますが、徐々に軟らかくなり、しばしば一部が破れて膿が流れ出ます。
通常、リンパ節の腫脹は、数週間から数ヵ月間持続します。

熱の症状

感染すると多くの場合、発熱、悪寒、倦怠感、食欲不振、頭痛、関節の痛み等を示しますが、一般的には自然に治癒します。
熱がずっと続いてだるくなっても、なかなか猫ひっかき病が原因だと気づかない場合が多いです。
猫ひっかき病の症状は風邪に似た症状なので、間違えないようにしなければいけません。

非定型的な症状

5~10%の割合で発生します。
その症状としては、パリノー症候群(耳周囲のリンパ節炎,眼球運動障害等)、脳炎、骨溶解性の病変、心内膜炎、肉芽腫性肝炎、あるいは血小板減少性の紫斑等が報告されています。
B. henselaeの心内膜炎は、特に、猫との接触がある心臓弁膜症患者に多くみられます。
脳炎は猫ひっかき病の最も重篤な症状の一つで、リンパ節炎を発症してから2~6週後に発症します。
意識障害を起こしたり、痙攣を起こしたりしますが、多くは、後遺症なしに完全に治癒します。
免疫力の低下を伴う基礎疾患がある場合や小児では、しばしば重症になります。
免疫不全状態の人が感染した場合には、「細菌性血管腫」を起こします。
「細菌性血管腫」は「上皮様血管腫症」ともいわれ、血液の充満した嚢腫を特徴とした皮膚の血管増殖性疾患です。
臨床的には、紫色や無色の小胞あるいは嚢胞が皮膚に多数できます。
実質臓器に嚢腫が波及した場合、細菌性肝臓紫斑病、脾臓性紫斑病などと呼ばれます。

猫の症状

猫は感染しても、通常症状を示しません。

猫ひっかき病の診断方法

・ネコに噛まれたり、引っ掻かれたりしていないかという問診、身体検査

・原因不明で3週間以上継続するリンパ節の腫れ

・原因不明の発熱

・血清診断

蛍光抗体法による血清診断法が開発されています。
感染した人間からの血液やリンパ節生検材料から本菌を分離することは非常に難しく、また培養から同定までに時間がかかるため,PCR法により臨床材料中のB. henselaeの遺伝子を検出する方法が迅速診断上有用です。
血液検査で行います。

猫ひっかき病の治療方法

成人の場合、特に治療を行わなくても、自己治癒力で、自然に治癒することがほとんどです。
解熱薬や鎮痛薬の対症療法だけで経過観察します。
一般に予後は良好です。
治癒するまでに数週間~場合によっては数ヶ月もかかることがあります。
症状が長引く場合には、抗菌薬を内服しますが、猫ひっかき病に対して各種の抗生物質の効果は低いとされています。
もし、使用するのであれば、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、アジスロマイシンなどの抗生物質の経口投与による治療を行います。
免疫不全の人や、免疫能力の落ちた高齢者では、重症化して麻痺や脊髄障害を起こす場合もあるので注意が必要です。
免疫不全患者に発生した細菌性血管腫や細菌性肝臓紫斑病の治療には,エリスロマイシン、リファンピシン、 ゲンタマイシン、 ドキシサイクリン、 シプロフロキサシン等が有効です。
猫ではドキシサイクリン、リンコマイシン、アモキシシリンの連続経口投与で、ある程度菌の量を抑制することはできますが,完全には除菌できないとされています。

猫ひっかき病の予防方法

ノミの駆除を定期的にする

ノミから感染しますので、猫を飼っている場合は、外に出さないようにしたり、ノミの駆除を定期的にするようにしましょう。

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猫と遊ぶときは気を付ける

人間の発症の約8割は、子猫からの感染という報告もあるくらい、子猫はじゃれて噛んだり引っ掻いたりします。
猫自体は遊びのつもりなので、しつけるというのも難しいです。
飼い主の側が引っ掻かれたり噛まれたりしないように気を付けてあげましょう。
人間の指や腕にじゃれてくるようであれば、噛んでよい玩具にすり替えるなどして、指をかませないように習慣づけていきましょう。

定期的に爪切りをする

引っ掻くつもりがなくても、爪が長いと怪我をしてしまうことがあります。
定期的に爪切りを行いましょう。

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猫を触った後は手洗いをする

室内猫だけでなく、野良猫や外に出ている猫を触った時には、必ず手洗いをしましょう。
慣れていない猫にはあまり近づかず、ひっかかれたり噛まれたりしないようにしましょう。

猫にひっかかれた、噛まれた場合の対処法

もし、猫に引っ掻かれてしまったり、噛まれてしまっても慌てないで対処すれば大丈夫です。
傷ができると、しばらくは痛みますが、通常は自然に治っていきます。
ただ、ひっかき傷が見た目に治っても、体内で細菌が繁殖して、猫ひっかき病に感染していることもありえます。
猫にひっかかれたり噛まれたりした時には、安易に考えずに、すぐに適切な応急処置をしましょう。

傷口を流水でしっかり洗う

水道水で良いので、しっかり傷口を洗い流します。
ひっかき傷にゴミや猫の毛など異物があれば、きれいに洗い流します。
噛まれた傷口には特に猫の口腔内の粘液などが付着しているので、時間をかけて丁寧に洗い流してください。
猫の爪や歯は鋭く、思ったより深く傷ついていることもありますし、出血することもあります。
傷口を開くような意識で中までしっかり洗い流しましょう。

消毒する

ひっかき傷を、オキシドールやアルコールなどの消毒液で消毒します。
最近の傷の治療では、湿潤治療というものが主流になってきています。
これは傷口を洗浄、消毒をまめに行わず、空気に触れて乾燥しないように潤った状態を保ち、体液に含まれる自己治癒促進物質を使って傷を治していくというものです。
過度な消毒は治癒するための新しい細胞も死滅させてしまうため、良くないとされています。
この方法は傷の治りが早く、痛みも少なく、傷跡も綺麗に治ると言われています。
しかし、猫のひっかき傷やかまれた傷の場合は別です。
しっかり消毒し、体内に入り込む細菌を退治して、感染症の危険をなくさなければなりません。
一度消毒をしてから、再び水道水で傷口を洗い、湿潤治療用の絆創膏を貼ると良いでしょう。
湿潤治療については病院によってのやり方がありますので、気になる場合は病院で診てもらったほうが良いでしょう。
筆者が猫に咬まれて病院に行った際には、局所麻酔を注射したうえで、歯ブラシのようなものでかなり念入りにゴシゴシ消毒をされました。
自分では痛みもあり、そこまで入念な消毒はできませんので、噛まれたら病院で処置してもらう方が確実かもしれません。

病院で診てもらう

自分では判断がつかなかったり、治るまで気になったりする場合は、病院で診てもらいましょう。
その時は「猫にひっかかれたり噛まれたりした傷」だと伝えてください。
病院に行かずに適切に応急処置をしても「ひっかき傷の痛みが強い」「腫れがひどくなってきた」「熱がでてつらくなってきた」などの症状が出れば、すぐに病院に行ってください。

さいごに

猫ひっかき病自体は、感染してもそれほど恐ろしい感染症ではありません。
まれですが、重症化すると、体の麻痺や意識障害が現れることもあります。
普段から噛まれたり、引っ掻かれたりすることを予防すること、応急処置を適切にすることが大切です。
感染している猫に咬まれたり、引っ掻かれたからといって、かならず、猫ひっかき病を発症するというわけではありませんので、過剰に猫を怖がる必要はありません。
むしろ、発症する方がまれです。
疲れていたり、風邪をひいていたりと、何らかの免疫力が低下している状況でなければそれほど心配しなくて大丈夫です。
動物病院で働いていれば、おのずと猫にひっかかれたり、噛まれたりする事は多くありましたが、もちろん私自身1回も発症したことはありません。
しかし、実は1回だけ獣医師の同僚が感染したのを見たことがあります。
1.2週間、なんとなく微熱で体調が悪いと言っていたのですが、しばらくして脇の下のリンパ節が腫れてきて感染していることに気付きました。
噛まれたり引っ掻かれたりは日常茶飯事なので、いつの傷が原因かは本人も認識しておらず、言われてみれば傷がある気もする。という程度の傷しかありませんでした。
病院に行った際、医師は、専門によってももちろん違うと思うのですが、人畜共通感染症に詳しくなかったようで、「猫に噛まれてリンパが腫れました」といってもピンとこなかったようです。
本人が「猫ひっかき病だと思う。」と申告したそうです。
もし、自分に知識がなければ、何となくの体調不良で病院に行った際、見逃されてしまう可能性があるという事ですよね。
自分を守ることができるのは自分だけです。
知識があると無いとでは、治療を開始できる時期が全然違いますので、猫を飼われている飼い主さんは、是非知識としてこの病気の存在を知っていていただけたらと思います。





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