泌尿器の症状

猫の腎不全のステージとは?ステージ別の余命や生存率はどのくらいなの?

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腎不全とは何らかの原因によって腎臓の機能が低下した状態で、短時間で腎臓の機能が低下してしまうものを“急性腎不全”、長い時間をかけて腎臓機能が低下してしまうものを“慢性腎不全”と言います。
その中でも慢性腎不全は高齢猫では非常によく見られる病気ですので、多くの飼い主の方の悩みのタネになっていることでしょう。
そこで今回は、

「慢性腎不全については色々なところで見聞きしてだいたいのことは分かっているけど、一歩踏み込んで詳しく知りたい!」

「飼い猫が今ステージ2の慢性腎不全と診断されているけど、あとどのくらい生きられるものなのか知りたい!」

このような疑問を抱いている飼い主の方のために、「猫の慢性腎不全のステージ分類」をピックアップして、その症状や治療法、余命について解説したいと思います。

猫の慢性腎不全の原因について

猫の慢性腎不全の原因は大きく分けて、急性腎不全の後遺症、腎臓の奇形、原因不明の3つに分かれます。

急性腎不全の後遺症

急性腎不全は、薬物中毒や感染症、結石による尿路閉塞などが原因で引き起こされる病気です。
非常に緊急性の高い病気で、積極的な治療をしても亡くなってしまったり、命は助かっても完全には腎臓の機能が回復せず慢性腎不全に移行することがあります。

腎臓の奇形

先天的に腎臓に奇形を持つ猫もおり、“腎臓低形成”や“多発性嚢胞腎”などが当てはまります。
“腎臓低形成”とは生まれつき腎臓が正常に発達できない病気で、若齢ですでに腎臓の数値が高いなどの異常が見られます。
“多発性嚢胞腎”とは、腎臓にぶどうの房のように液体がたまった袋が無数にできることによって正常な腎臓の構造が破壊されていってしまう遺伝性の腎臓病で、中齢(平均して7歳程度)の猫で慢性腎不全の症状が強く表れるようになります。
特にペルシャネコやアメリカンショートヘアー、スコティッシュフォールドなどに見られると報告されています。

原因不明

上記の2つ以外の原因で高齢の猫に見られる一般的な慢性腎不全の多くは原因不明と言われています。

猫の慢性腎不全の診断方法について

猫の慢性腎不全を診断するためには血液検査、尿検査、画像検査を組み合わせて行います。

血液検査

BUN(ビーユーエヌ、尿素窒素)やCRE(クレアチニン)は腎臓の機能を反映している検査項目になり、この2項目が基準値よりも上昇していると腎機能の低下を疑います。
とくにCREは慢性腎不全のステージ分類の指標の一つです(ステージ分類については後述)。
またカリウムやリンといったミネラルの異常値も慢性腎不全の猫では決して珍しくなく、使用する点滴剤の選択に影響していきますので、見逃せない項目です。
また、腎臓では赤血球を作るホルモンが分泌されるため、慢性腎不全が進行すると貧血が見られる場合があるのですが、その確認のために赤血球、白血球、血小板という血液の細胞成分を調べる全血球検査を行います。

SDMA(エスディーエムエー)

SDMAとは、2016年から日本で測定することができるようになった新しい猫の腎機能マーカーで、こちらは特殊血液検査の項目になります。
これもCRE同様、慢性腎不全のステージ分類の指標の一つです。
CREは腎機能が75%程度失われるまで上昇することがありませんが、SDMAは25〜40%程度失われると上昇することが分かっており、従来よりも早期に慢性腎不全を診断できる画期的な血液検査項目として注目されています。

尿検査

尿検査では特に尿比重、尿蛋白が特に重要な項目です。
慢性腎不全になると尿が薄くなるため、尿比重が低くなったり、体に必要なタンパク質が尿中に検出されることがあるので、注意深くチェックします。

血圧測定

腎臓は血圧を調節するホルモンを分泌していますが、慢性腎不全になると高血圧が引き起こされることがあります。

画像検査(レントゲン検査や超音波検査)

腎臓の形やサイズを確認するため、レントゲン検査や超音波検査を行います。
特に多発性嚢胞腎や腎低形成などの先天的な病気の診断には、超音波検査が不可欠です。
また慢性腎不全は正常な腎臓に比べて小さくなっていることが多く“萎縮腎”と呼ばれる状態になっていることが多いです。

猫の慢性腎不全のステージ分類について

猫の慢性腎不全は大きく4つのステージに分類されます。
ここでは、ステージ別の検査数値、症状、治療法について解説したいと思います。

ステージ1(初期)

血液検査でクレアチニン値は1.6mg/dl未満と正常値内であっても、尿検査で尿の比重が低下している(薄い尿がでている)、超音波検査で腎臓の形がいびつになっている場合、ステージ1の慢性腎不全と診断されます。
この時期の症状は、多飲多尿(水をよく飲んで、薄い尿を大量にする)という以外ほとんどなく、多くの場合健康な猫として見過ごされています。
高血圧やタンパク尿でなければ無治療で経過観察し、定期検査を行っていきますが、ステージ2への進行は時間の問題なので腎臓用の療法食開始をおすすめされることが多いです。

ステージ2

ステージ1の異常所見に加え、血液検査でクレアチニン値は1.6〜2.8mg/dl未満と正常値よりやや高い値を示します。
症状も多飲多尿以外の症状はほとんどないか、もしくはあっても軽度です。
この時期の治療法としては、腎臓病用の療法食の開始が推奨されています。
また、もし高血圧やタンパク尿がみられるようであればACE阻害剤などの降圧剤の治療を開始します。

ステージ3

血液検査でクレアチニン値は2.9〜5.0mg/dl未満、貧血やBUNの高値などの異常が見られるようになります。
この時期になると、多飲多尿以外にも、嘔吐や食欲不振といった症状が見られてきます。
治療法としては、ステージ2の治療に加え、脱水の程度に応じて点滴、必要に応じて貧血の治療(ヒト用エリスロポエチン製剤の投与等)、制吐剤の使用を行います。

ステージ4(末期)

血液検査でクレアチニン値は5.0mg/dl以上、BUNの重度の高値などの異常が見られるようになります。
このステージではいわゆる“尿毒症”という状態になり、元気食欲不振や頻回の嘔吐、むくみ、意識の低下、けいれんといった症状が出てくるようになります。
さらに腎臓が機能しなくなると尿が作られなくなり、“乏尿(ぼうにょう)”や“無尿(むにょう)”という状態になります。
治療法としては、ステージ3の治療に加え、強制的な栄養補給、より積極的な点滴治療を行います。
人間では透析や腎移植を行う時期になりますが、設備的に実施可能な動物病院は少なく、ドナーの確保の問題など現実的にはハードルが高い治療法になります。

猫が腎不全に?クレアチニンとBUNの数値は何を表してるの?

猫の慢性腎不全ステージ別の生存期間(余命)について

慢性腎不全と診断された猫の飼い主様から「あとどのくらい生きられますか?」と聞かれることも多いですが、実に難しい質問です。
なぜならば、飼い主の方がどのくらい積極的な治療を希望するか、その間に他の病気になってしまうか、などの要素で大きく変わってしまうからです。
ある海外での研究結果では、
ステージ2では、生存期間の平均が約3年(最長が約8年)
ステージ3では、生存期間の平均が約2年(最長が約6年)
ステージ4では、生存期間の平均が約3ヵ月(最長が約5年)
という結果であったと報告されています。
この結果から言えることは、「ステージ4では極端に生存期間が短い」ということと、「ステージ2、3では年単位で生きてくれることがほとんど」、ということになります。

さいごに

猫の慢性腎不全は本当に多く見られる病気ですので、飼い猫が高齢(10〜12歳以上)になってきたら、年に1回程度健康診断されることをおすすめします。
特にSDMAは慢性腎不全の早期発見マーカーとして期待されていますし、大がかりな検査ではありませんから、オプション検査として実施されてはいかがでしょうか?

関連記事になります。合わせてご覧ください。

獣医師解説。猫の慢性腎不全の原因や症状や治療とは?回復はするの?

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