「猫が下痢をするけど原因は何?」
「猫が下痢をして血がついていたけど様子を見ても大丈夫?」
「下痢していた猫がだんだん元気や食欲がなくなってきたけれど、何か悪い病気?」
こんな疑問はありませんか?
猫が下痢していたら、どのタイミングで動物病院を連れて行ったらよいのか、どんな病気のせいで下痢をしているのだろうかと心配になりますよね。
そこで今回は猫の下痢について、飼い主の方が知りたい情報をピックアップして解説していきたいと思います。
病院にすぐに連れて行くべき下痢、様子を見ても大丈夫な下痢なども解説します。
猫の正常な排便とは?
排便は、健康状態を評価する重要なパラメータの一つです。
特に排便の量、排便回数、硬さや色は重要なチェックポイントで、健康な時からそれらを把握しておくと、異常が起きたときに早く気付くことができます。
猫の排便回数はどのくらい?
十分な食事をとっている健康な猫は1日に1回以上は排便をします。
ただ、排便は食べている餌の内容(特に繊維の量)に大きく影響され、また猫1匹1匹の体質によっても異なるため、1日何回までなら正常な排便回数という決まりはありません。
1日3回くらいに分けて少量ずつ出す猫もいれば、1日1回まとまった量を出す猫もいます。
逆に1日くらい出なくても、元気食欲があり次の日にしっかりと出していれば便秘症ということもありません。
飼っている猫が健康な時に「この猫はこのくらい餌を与えると、1日1〜2回くらい排便する」だとか「この餌にすると便の回数が増える」といったことを記憶しておくことが重要です。
便の正常な固さや形、色は?
固さや色は排便回数と同様に食べている餌や猫の体質に影響されますが、一般的には猫は水分の摂取量が少ない動物ですので、正常便は犬などに比べて固くコロコロしており、ペットシーツ上に排便しても便の触れた部位がわずかに汚れるくらいの水分量です。
また色は通常は焦げ茶を呈していて、もしいつもよりも形はあるけど触ると容易につぶれる、泥っぽいという場合は下痢と判断されます。
また色が薄い場合は消化不良や肝胆道系の病気を、炭のように黒っぽい場合は胃や小腸での出血、赤い色が混じる場合は大腸からの出血が疑われます。
このような便の色の変化が認められれば、猫の体に何らかの異常があると考えましょう。
猫の下痢について
よく耳にする「下痢」とは医学的にどういうことを意味するのか、また下痢はどんな風に分類されているのかについて解説します。
下痢とは?
下痢とは、「糞便中の水分が増加したやわらかい状態」を言い、なんらかの異常によって小腸や大腸で水分を十分吸収できなかったり、腸管へ水分が出てくることによって起こります。
正常な便に含まれる水分の量は約70%程度に対して、水分を80%以上含む場合を下痢と呼び、便の形が崩れていきます。
そして水分が90%以上になると、便は水のようになります(水様性下痢)。
下痢の分類とは?
下痢は、腸管のどこか原因で起こっている下痢なのか、どんな症状の下痢なのかで分類されます。
小腸性か大腸性か
腸管には、栄養を吸収する小腸と水分を吸収する大腸があります。
小腸に下痢の原因がある場合を「小腸性下痢」、大腸に原因がある場合を「大腸性下痢」と言い、小腸性下痢と大腸性下痢では原因となる病気が異なります。
小腸性下痢の特徴は、排便回数は正常〜やや増加する程度で、未消化な悪臭が強い大量の下痢をし、体重減少や嘔吐を伴うこともあります。
一方大腸性下痢の特徴は、ドロッとした粘液の混ざった少量の下痢を何回もし、排便時に力強くいきむ行動(「しぶり」と言う)が見られます。
急性か慢性か
ある日突然下痢をするようになった場合を「急性」の下痢といい、一般的な治療を行っても数週間も続く場合を「慢性」の下痢と言います。
急性と慢性では、原因となる病気が異なります。
下痢の時のチェックポイントは?
「猫が下痢をしている」という症状で動物病院を受診すると、緊急性の高い下痢なのかを判断するために、かなり深く突っ込んだ質問をされます。
できるだけ正確に答えると獣医師側も病状を把握しやすいので、忘れないようにメモをしていくのも良いでしょう。
・いつから下痢をしているか
・便はどんな形か(形はあるが柔らかい、水っぽい下痢、カレー状、泥状等)
・いつもより1回の便量は少ないか
・だいたい1日何回下痢をしているか
・下痢をする時力強くきばっているか
・下痢の色はいつもと違うか(赤い、薄い、黒いなどの変化があるか)
・下痢にドロッとした粘液が混じっているか
・下痢の臭いはいつもより強いか
・便にヒモ状の白い虫や肛門の回りに白い米粒のような虫をみたことはないか
・嘔吐はあるか
・元気と食欲はあるか
・何か変なものを食べたことはあるか
・食事は変えていないか
・最近痩せてきたか
猫を病院に連れて行くべきか見極めるポイントは?
人間にはストレスや冷え、食べ過ぎなどで下痢をしやすく、治療をしなくても自然に治まってしまうことがよくありますよね。
もちろん猫に起こる下痢の中にもそのようなものもありますが、中にはしっかりと治療しなければ改善されない病気で下痢が起こっていることもあります。
では動物病院を受診した方がよい下痢とはどんなものなのでしょうか?
見極めるポイントについて解説します。
早めに動物病院で治療した方がよい下痢とは?
下痢以外にも以下のような症状が見られたら、早めに動物病院を受診して治療を受けましょう。
・激しい水下痢を複数回している
・1日1回の下痢でも数日以上続く
・元気や食欲がない
・嘔吐がある
・便が真っ黒
・1日に何回も下痢をする
・やせてきている
・肛門から真っ赤な血が多量に出ている
・中毒性物質や異物を食べた可能性がある
・子猫や持病のある高齢猫が下痢をしている場合
・下痢や軟便に少し血が混じる
・虫を吐いたり、下痢の中に虫がみられた
・排便時に強くいきんでいる
特に肛門から真っ赤な血が多量に出ている場合、中毒性物質や異物を食べた可能性がある場合は、緊急度が非常に高い下痢と言えます。
夜間であっても迷うことなく動物病院を受診しましょう。
緊急度はなく、様子を見ても差し支えない下痢とは?
以下のケースでは一過性の下痢であることもあるため、1〜2日程度なら様子を見ることも差し支えないと考えられます。
食事の変更による下痢
フードを新しいものに変えた場合、胃腸が慣れるのに数日程度かかることがあります。
今まで与えていたフードを混ぜながら少しずつ切り替えるとよいでしょう。
1回だけおきた突然の下痢
急性の下痢で回数も少なく、元気も食欲もある場合には下痢が続くかどうか様子を見てもよいでしょう。
猫の下痢の原因にはどんな病気がある?
どのような病気になると猫が下痢をしてしまうのか、具体的な病名を挙げて解説します。
消化不良
犬と猫の下痢の中で日常的に見られるのが、食事の影響を受けた消化吸収不良による急性の下痢です。
食べ過ぎたり急激にフードを変えてしまったり、牛乳などの乳製品を与えてしまったりすると消化不良による下痢を起こしてしまいます。
感染症
腸に感染するウイルス(パルボウイルスやコロナウイルス等)や細菌(カンピロバクター等)によって急性の下痢を引き起こすことがあります。
特に猫で気をつけなければならないのは、パルボウイルス感染症(猫汎血球減少症)です。
この病気はワクチンを接種していない子猫に重篤な下痢を起こし、場合によっては亡くなってしまうこともある恐ろしい病気です。
3種混合ワクチンを摂取していれば防ぐことのできる病気ですので、必ず摂取するようにしましょう。
⇒猫のパルボウイルス感染症(汎白血球減少症)とは?症状や治療法を解説
アレルギー
猫ではあまり多くはありませんが、フードの中に含まれる特定のタンパク質に対し、アレルギー反応を起こして下痢になることがあります。
寄生虫
小腸や大腸の中に寄生虫がいると下痢を起こすことがあります。
猫でよく見られる寄生虫には、回虫、瓜実条虫、コクシジウム、トリコモナスやジアルジアがあります。
特に猫で重篤な下痢を引き起こすのが、コクシジウム、トリコモナスやジアルジアといった原虫によるもので、原虫は回虫や条虫と違い目で見えない寄生虫で、若い猫での発生が多い病気です。
寄生虫性の下痢はほとんど急性に起こりますが、トリコモナスは発見が遅れやすく慢性的な下痢になる場合が多い病気です。
⇒猫のコクシジウム症の症状や原因や治療薬は?費用はどのくらいかかる?
⇒猫のトリコモナス症の症状や原因や治療方法とは?完治はするの?
⇒猫の回虫症の症状や原因や治療方法は?駆除はどうしたらいいの?
炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患(IBD)とは、リンパ球プラズマ細胞性腸炎や好酸球性腸炎などの慢性的な腸炎を総称したものです。
下痢の経過は数週間以上続き(慢性的)、体重減少や嘔吐など小腸性下痢に特徴的な症状が見られます。
診断の多くは内視鏡検査が必要で、後述のリンパ腫などの悪性腫瘍と鑑別する必要があります。
悪性腫瘍
猫の腸管にはリンパ腫(低分化型・高分化型)、肥満細胞腫、腺癌など悪性腫瘍が発生することがあります。
腸管に悪性腫瘍ができると、慢性的に下痢をしている、嘔吐が認められる、やせてきた、食欲が落ちてきたという症状が見られます。
中でもリンパ腫は高齢猫において、非常に発生頻度が高い病気です。
低分化型リンパ腫に比べ高分化型リンパ腫は進行がゆっくりであり、内視鏡検査の結果も炎症性腸疾患との鑑別が難しいケースがあります。
⇒猫の肥満細胞腫の原因や症状や治療法は?良性や悪性とは?余命はどのくらい?
⇒猫の悪性リンパ腫の症状とは?ステージ別の余命、生存率はどのくらい?
⇒悪性リンパ腫の猫にステロイドや抗がん剤治療の効果は?費用はどのくらいかかる?
抗生剤などの処方薬
抗生剤の投与などの処方薬で下痢や嘔吐が誘発されることがあります。
処方された薬を飲ませると必ず吐いてしまうのであれば、薬剤の影響が考えられますので獣医師に相談してみましょう。
猫の下痢した場合どんな対処をしたらよい?
どうしてもすぐには動物病院を受診できない時、また様子を見ても良いと思われるような軽度の下痢の場合、自宅で飼い主の方はどんなことを心がけたらいいのでしょうか?
飼い猫が下痢をした時に、多くの飼い主の方が抱かれる疑問をピックアップして解説します。
下痢のときは絶食絶水にした方がよい?
「下痢をしていたら、何も口にさせずお腹を休めた方がいいのか?」と疑問に思われる方もいらっしゃると思いますが、これは正しくありません。
下痢をしているのに絶水にすると脱水に拍車がかかってしまいますし、猫は突然何日も絶食させると肝リピドーシスという肝臓の病気になることがあります。
また現在は、腸内細菌のバランスを保ったり腸管が機能を回復するためには、食事が腸内を流れることが必要であり早期に消化管を動かした方がよいと考えられています。
急性の下痢で、嘔吐しているわけでもなく猫が自発的に飲食できる状態なら絶食するとしても半日程度に留め、食事再開後は一度に沢山の食事を与えずに、少量ずつ何回かにわけて与えるのがよいでしょう。
なお、リンパ腫や炎症性腸疾患などの慢性下痢の場合は、絶食の必要はありません。
猫にビオフェルミンを与えても大丈夫?
ビオフェルミンのような人用の乳酸菌製剤を、猫に与えても問題はありません。
ただビオフェルミンの整腸効果には即効性がありませんので、緊急性の高い下痢の治療には適していません。
通常乳酸菌製剤は、他の下痢止めと併用したり、下痢しやすい猫に食事療法と合わせて補助的に使用することが多いです。
市販されている人間用の下痢止めは使っても大丈夫?
薬局で購入することができるストッパ下痢止めなどの市販薬を猫に応用するのは止めて下さい。
主成分であるタンニン酸ベルベリンは、猫にも下痢止めとして使用することはありますが、市販薬には人工甘味料やメントールなどの添加物が含まれているため、猫の下痢を更に悪化させる可能性があります。
もし添加物の含まれていない主成分だけであっても、猫の体重によっては錠剤を分割しないと過剰投与になる恐れがありますので、動物病院を受診して症状に合ったお薬を処方していただくようにしましょう。
下痢の時ドライフードはふやかした方がいい?
私達人間が体調不良時にはお粥を食べるように、猫も消化しやすいように水分を沢山とれるようにと、ドライフードをふやかして与えた方がよいのでは?と考える方もいらっしゃると思います。
残念ながらグルメな動物である猫は、ふやけたフードでは味が落ちたり触感が変わってしまうため、食欲があるときでも口をつけないことが多いです。
試してみていただいても問題ありませんが、下痢で具合が悪い時は恐らくもっと食が進まなくなると思います。
また慢性下痢の場合は、消化のよい療法食を食べた方がよいですので、ふやかす必要はありません。
ドライフードを食べないので、缶詰をあげてもよい?
下痢をしていていつもより食欲がない場合でも嗜好性が高いウェットフード(缶詰やパウチ)なら食べてくれることがあります。
また食欲がない時は水を飲む量も減りがちなので、水分量の多いウェットフードはおすすめです。
ただし、今まで食べたことのないフードだとそれがかえって腸を刺激してしまうことがありますので、今まで食べていて問題なかったウェットフードを選ぶようにしましょう。
また電子レンジで少し温めてあげるとニオイが強くなるので、食欲を刺激されやすくなりますよ。
下痢しやすい猫にはどんな食事がよい?
下痢しやすい猫や慢性下痢の見られる猫、急性下痢で症状が重篤であった猫には、消化管に対する負担や刺激を少なくした療法食をおすすめされることがあります。
代表的なものに、ロイヤルカナン社の「消化器サポート」や「低分子プロテイン」、「セレクトプロテイン」、ヒルズコルゲート社の「i/d」や「z/d」があります。
下痢の原因は様々ですので、原因に応じて療法食を選ぶ必要がありますし、また猫が喜んで食べてくれるかどうか分からないので、動物病院を受診して症状にあったおすすめのフードのサンプルを貰うといいでしょう。
猫にポカリスエットをあげてもよい?
下痢をしていると脱水になるのではないかと心配になりますよね。
もし下痢をしていていつもより摂取している食事量や水分量が少ないのであれば、単なる水ではなく電解質も含まれた「経口補水液」を与えるのが望ましいです。
できれば犬猫用のものがベストですが、無かったら乳幼児用のポカリスエット(ビーンスタークポカリスエット)、もしくは大人用のポカリスエットを数倍に希釈して飲ませても問題ありません。
ただし、ポカリスエットは独特な柑橘系の香りがするので、猫によっては警戒して飲まないかも知れません。
もしポカリスエット以外の人用のスポーツドリンクを使用する際は、中には人工甘味料が含まれていないかを確認し、人工甘味料が含まれているものを猫に与えることは避けましょう。
さいごに
猫にとって下痢は日常的な症状ですが、この記事を読んで「こういう下痢が見られたら、すぐに動物病院に行った方が良いのだな」と覚えていただけたらと思います。
また、下痢の量や回数、硬さや色、排泄時の様子などの情報は診断の上で非常に重要ですので、よく観察するようにして下さいね。
関連記事になります。合わせてご覧ください。
⇒猫の便の色が黒い、薄い、赤い、白い、緑。原因は何?病気のサイン?
⇒猫が吐く(嘔吐)原因は何?病気のサイン?病院に行くべき嘔吐とは
「動物病院に連れていきたいけど治療費はどのくらいかかるんだろう?」
「愛猫の病気を治してあげたいけど高額費用を支払う余裕がない…」
という飼い主さんはとても多いです。
動物病院で治療する場合、病気によっては10万円以上かかってしまう場合もあります。
動物病院で治療すれば助かった命は実に多いです。
経済的な問題で愛猫の寿命を縮めないためにも愛猫が元気なうちにペット保険に加入することが大事になります。
でも「ペット保険っていうけど、どういう保険があるの?」という疑問も出てくるかと思います。
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