生殖器の病気

獣医師が猫の去勢手術を徹底解説。時期はいつするの?費用は?

投稿日:2017年8月14日 更新日:

 

「子猫の去勢手術を考えているけど、いつ頃がいいのかな?」

「猫が大きな声で鳴いて困っている。去勢手術をすれば治まる?」

「猫の去勢手術は何のためにするの?費用はどのくらい?」

猫を飼われている方の多くが、猫の去勢手術について検討されるかと思います。

実際に、去勢手術とはどのような手術なのか、事前に詳しく知りたいという方のために、今回は猫の去勢手術について徹底解説します。

猫の去勢手術とは

オス猫の性成熟は平均8か月齢で、早い場合は5か月齢です。
この時期を過ぎると、子孫を残そうとする本能から、メス猫を求め、様々な行動がみられます。
去勢手術とは、オス猫の生殖器である精巣を外科的に切除し、生殖能力を取り除く手術です。

オス猫の生殖器

生殖器は、動物が子を作るための器官で、オス猫とメス猫ではその構造や働きは大きく異なります。
生殖の時には、オス猫が精子を提供し、メス猫がそれを受け取り、ネス猫の体内で卵子と結合して受精卵となります。
受精卵はメス猫の子宮内で次第に大きく成長して、子猫が生まれます。
オス猫の生殖器は「精巣」(睾丸)と「陰茎(いんけい)」(ペニス)で、副生殖器は「前立腺」です。
精巣は生まれたばかりの時にはお腹の中にありますが、生後20日くらいまでに陰嚢内に下降してきて、オス猫の尾を持ち上げた時に、上から肛門、精巣、陰茎の順でみることができます。
精巣では精子が作られる他、オス特有のホルモン(雄性ホルモン)を分泌しています。
精巣で作られた精子は、「精管」と呼ばれる細い管を通って陰茎まで運ばれます。
前立腺は卵形で、膀胱の後ろにあり、精液の成分となる透明な液を分泌しています。

去勢手術は本当に必要?

「去勢手術で生殖能力を奪ってしまうなんて、自然の摂理に反する」と考える方、あるいは「健康な猫に麻酔をかけて手術を行うことに抵抗がある」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
命ある生き物に人間の考えやライフスタイルを押し付けるわけですから、様々な意見があって当然の問題だと思います。
しかし、現代の人間社会では、残念ながら全ての人が“猫が好き”“猫に寛容”というわけではありませんし、猫の糞尿や発情期の行動に関わるトラブルが多いのも事実です。
無秩序に繁殖して増えた猫が交通事故に遭ったり、保健所で殺処分されたりといった現状もあります。
このようなことから、人間の社会の中で猫が幸せに、トラブルを最小限にして暮らすためにも、繁殖の予定がないのであれば去勢手術をした方がいいという意見が、現在は主流になっています。
去勢手術をすることで猫が生殖器に関する病気になるのを防ぐことができますし、なによりも計画外の妊娠で不幸な子猫を増やさないようにすることもできます。
去勢手術をするか否かについては、獣医師だけでなく、飼い主さん一人ひとりがしっかりと考えるべき責任のひとつです。

行政による殺処分数

近年では「殺処分ゼロ」を目指し、様々な活動も行われていますが、いまだに数多くの猫が国内で殺処分されています。
環境省の報告によると、平成27年度に全国の保健所や動物愛護センターに引き取られた猫は90,075頭で、最終的に67,091頭の猫が殺処分されていて、そのうち離乳前の子猫の頭数は44,068頭だそうです。
さらに飼い猫が出産したものの、「自宅では育てられない」「里親が見つからない」などといった理由で飼い主から引き取った猫は14,061頭で全体の16%に上り、そのうち離乳前の子猫は6,415頭とのことです。

去勢手術のメリット

去勢手術をすることで得られるメリットについて解説します。

発情期の行動を軽減する

オス猫は性成熟を迎えると、発情期のメス猫を求めて様々な行動をとるようになります。
それらの行動の中には、人間と一緒に暮らしていく上で、困った行動となることもありますし、猫自身にもリスクが高まる恐れがあります。
しかし、去勢手術をしたオス猫の90%は、術後に発情期の行動はみられなくなりますが、10%は変わらないともいわれています。
特にマーキング行動は一度行うと、習慣として残ってしまうこともあるため、行動が現れる前に去勢手術を行った方がいいでしょう。
発情期にオス猫にみられるみられる行動とは、下記の様なものです。

マーキング、尿スプレー

室内でも壁や家具などいたるところにおしっこを飛ばすようにかける尿スプレーがみられます。
これには、縄張りを主張するマーキングの意味のほか、メス猫への自分のにおいを残してアピールする「ラブレター」の意味もあると言われています。
この行動はオス猫だけでなく、メス猫でもみられます。

大きな声で鳴く

発情期になると、大きな声で鳴き続けます。
夜中でも鳴き続けるため、飼い主さんが夜眠れなかったり、ご近所トラブルになるということもあるため、深刻な問題になりがちです。

メス猫を求めて外に出たがる

発情期のメス猫を求めて、外に出たがるようになります。
完全室内飼育の猫でも、少し油断した隙に脱走してしまい、迷子になったり交通事故に遭うリスクもあります。

ケンカ

オス猫同士がメス猫をめぐり、激しいケンカをすることがあります。
体に怪我を負うだけでなく、咬み傷から細菌やウイルスが侵入して感染症がうつる可能性もあります。

病気のリスクの減少

犬に比べると猫ではまれですが、高齢猫でみられる前立腺肥大、精巣腫瘍など生殖器の病気のリスクが減少します。
また、メス猫を求めて外へ出たり、他の猫とケンカすることが少なくなるため、感染症にかかるリスクを減らすことができます。

ストレスの軽減

発情期の猫を探しに行けないストレスや、交尾ができないストレスは非常に強く、体調不良をあらわす猫もいます。
去勢手術をすることで、そういったストレスから解放することができます。

性格の変化

術後は、性格が穏やかになると言われ、他の猫とのケンカや争いごとが減るケースが多くなります。
術前に比べて、甘えん坊な性格になり、飼い主さんと触れ合おうと寄って来るという猫もいます。

去勢手術のデメリット

次に、去勢手術によるデメリットを解説します。
術後に影響するデメリットについては、飼い主の方が常に気を配ることで対処できる事であるため、メリットの方が大きいと思われます。

全身麻酔のリスク

去勢手術はほとんどの場合、全身麻酔下で行われます。
これは、猫を動かないようにすることで安全に迅速に手術が行えるためで、麻酔中は猫は刺激や痛みを感じなくなります。
つまり、体の反射がなくなり、呼吸や心拍も抑制される他、麻酔薬の代謝や排泄のために肝臓や腎臓の負担も増します。
もちろん安全性の高い麻酔薬が使われますが、それでも全身麻酔をかけることは健康な猫であっても多少の負担がかかり、薬に副作用があるのと同じように「100%安全」とは言い切れません。
ただし、術前検査によって健康状態を確認して麻酔をかけられる状態かどうかを判断したり、麻酔中は慎重にモニタリングして麻酔の量を微調整するなど、常に不測の事態に備えています。
高齢や肥満、腎不全などの慢性疾患がある場合には、麻酔のリスクが増すため、手術できないこともありますので、全身麻酔をかけるのであれば、なるべく若くて健康なうちに行うのが最適です。
不安が残るようでしたら、獣医師に麻酔についてしっかりと説明を求め、納得するまで確認しましょう。

肥満のリスク

去勢手術後は性欲がなくなる分、食欲が増すと言われています。
それに加え、メス猫を探してウロウロ徘徊したりすることがなくなるため、活動量も減ります。
発情期に関するストレスもなくなるため、「以前よりもよく食べて、動かない」という肥満しやすい生活になってしまいます。
肥満は糖尿病など様々な病気のリスクを高めますので、手術後は特に適切な食事管理によって、肥満を予防しましょう。

下部尿路疾患のリスク

因果関係はまだ解明されていませんが、去勢した猫では下部尿路疾患のリスクが高くなると言われています。
下部尿路疾患の中でも、重篤な状態に陥る可能性のあるものは尿石が尿道に詰まって排尿障害を起こす「尿路閉塞(尿閉)」です。
これには、頻尿や血尿、陰茎を気にしているなどの尿石症や膀胱炎の症状が予兆としてみられるケースがほとんどですので、その段階で気が付いてあげることで予防できます。

猫の下部尿路疾患ってどんな病気?症状や治療、フード(餌)について解説

去勢手術の時期

去勢手術を受ける時期は、いつ頃が最適なのでしょうか。

最適な時期

最も適している時期は、生後6か月~1年であるとされています。
体が十分に成長し、体力もあるため、手術や麻酔による負担が少ない時期です。
性成熟を迎える前に手術を受ければ、尿スプレーなど発情期特有の行動を覚える前であるため、今後もみられない可能性が高くなります。

生後すぐに手術するのは早い?

去勢手術は、全身麻酔をかけて行う手術です。
全身麻酔にはリスクが伴うため、呼吸器官や代謝系がしっかりと準備できてから行う方が、リスクは少なくなりますし、その後の成長に影響することもあると言われています。
一般的に手術に耐えられる体に成長するのは、生後6か月以上、体重2kg以上とされています。

1歳を過ぎてからだと遅い?

健康な猫であれば体力的には問題がないため、遅すぎるということはありません。
ただし、発情行動がすでにみられている場合には、手術後も尿スプレーなどの行動が残ることもあります。
シニア猫の場合には、体力が衰えていたり、腎臓疾患などの慢性疾患を患っている可能性も高くなるため、全身麻酔下で手術をすることのリスクは高まります。
ただし、生殖器官の病気であれば手術をするメリットは大いにあります。
1歳を過ぎてくると、猫が肥満になっているケースも多くなり、そういった意味でも肥満ではない若いうちに手術をする方がいいと思います。

去勢手術の流れ

では、実際に去勢手術はどのような流れで行われるのでしょうか。
かかりつけの動物病院によって多少異なりますが、一般的な流れをご紹介します。

去勢手術の相談

かかりつけの動物病院で、去勢手術について相談しましょう。
まだ悩んでいる方も、まずは獣医師に相談をして、不安な点や疑問点を解消して検討してみてください。

事前にワクチン接種を

動物病院で去勢手術を受けるためには、事前にワクチン接種をしていなければなりません。
ワクチンは感染症に対する免疫(抗体)を体内に作り、病気を予防するものです。
動物病院は病気の猫も含め、たくさんの猫が集まる場所なので、病気をもらってしまったり、他の猫にうつさないためです。
ワクチンは接種してすぐに効果が出るわけではなく、個体差はありますが接種後2週間ほどで抗体が定着します。
その期間のことも考慮して、手術時期を検討しましょう。

手術1~2週間前:術前検査

血液検査で麻酔に耐えられる状態かどうか、全身の健康状態の確認を行います。
特に、麻酔薬の分解や代謝、排泄に関わる肝機能、腎機能がしっかりしているか、手術中の出血に備えて、止血機能がきちんと働いているかを検査します。
状況に応じて、X線検査や超音波検査が必要になる場合もあるでしょう。

手術前日:絶食

手術の説明の際に、獣医師から「○時以降は絶食、飲水は○時まで」という指示が出されるかと思います。
手術中に嘔吐したものが気管に入ると、「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を起こし、命にかかわる事態に陥ります。
手術の前日は、絶食をして胃の中を空っぽにしておく必要があります。
動物病院で指示された時間を守り、それ以降はごはんを与えないでください。
お腹がすいた猫がフードの置き場所やゴミ箱などをあさってしまうかもしれませんので、猫に見つからない場所に隠したり、ゴミ箱が開かないようにロックをかけてください。
もしも少しでも食べた可能性がある場合には、何時頃にどのくらいの量を食べた可能性があるかを、正直に獣医師に申し出てください。
麻酔事故のリスクから猫の命を守るため、手術を延期することもあります。

手術当日:動物病院へ

いよいよ当日です。
飼い主さんの緊張が伝わると猫もソワソワと落ち着かなくなってしまうので、難しいかもしれませんが、できる限りリラックスして指定された時間までに動物病院へ向かいましょう。
術前検査から当日までの猫の健康状態で気になることがあれば、獣医師に伝えましょう。
下痢をしている、嘔吐を繰り返しているなど体調不良の場合には、手術を延期する可能性もあります。

【去勢手術の手順】

手術の手順や麻酔方法は動物病院によって異なりますが、一般的にまず静脈に点滴用の留置針を入れ、注射の麻酔薬~吸入麻酔薬によって全身麻酔をかけます。
睾丸(精巣)の周りの毛を剃り、睾丸の皮膚を切開して精巣、精管を露出させます。
精管と血管をきつく縛り(結紮(けっさつ))、精巣を摘出します。
去勢手術は開腹手術ではないので、皮膚の切開部分が小さく、皮膚の縫合は行わないケースが多いでしょう。
麻酔が安定してかかるまでの時間は猫によって個体差がありますが、精巣の摘出自体は特に問題がなければ10分前後で完了します。
猫が全身麻酔から醒めるまで慎重に観察し、終了です。

手術1~2日後:退院

入院期間は動物病院によって異なります。
手術当日は、麻酔が醒めたばかりで意識がはっきりしていなかったり、ストレスや痛みから食欲がないことも多いため、動物病院でしっかりと管理してもらうと安心でしょう。
猫の入院ストレスを考慮して、日帰りで手術をする動物病院もあります。

エリザベスカラー装着

去勢手術の傷口は、肛門と陰茎の間であるため、排泄時の邪魔にならないように、ガーゼや包帯で覆うことはしないのが一般的です。
そのため、術後は首に巻くエリザベスカラーを装着し、傷口を舐めないようにします。
切開した皮膚を猫のザラザラした舌で舐めてしまうと、治りかけた傷口が開いてしまったり、化膿してしまう恐れがあります。
そうなった場合には、再度麻酔をかけて皮膚の創傷面をきれいにして縫合する必要も出てくることがあり、猫にさらなる負担をかけてしまいます。
「猫が苦しそう」「かわいそうだ」と思っても、勝手にエリザベスカラーを外してしまうのは、絶対に止めましょう。
もしも、ごはんが食べられないなどの生活面で支障が出ているのであれば、獣医師に相談してみてください。

手術1週間~10日後:傷の確認、抜糸

手術から約1週間後に、再び動物病院を受診し、傷口の確認をします。
完全に傷口がふさがって、猫が舐めても問題がない状態であることを確認し、エリザベスカラーを外します。
切開した皮膚を縫合した場合には、ここで抜糸を行います。

去勢手術の費用

去勢手術の費用は動物病院によってかなりの幅があり、5000円未満~10万円以上で、中央値は12,652円という調査結果があります。
これには、術前の検査や入院費、術後の検診などの費用を含んでいる場合とそうでない場合があるため、必ず事前にかかりつけの動物病院で確認しましょう。
なお、一般的な術前検査は3000~5000円程度、猫の1泊の入院費は3000円程度でしょう。

補助金、助成金について

動物愛護の観点から、市区町村単位で去勢手術に対する助成制度を設けている自治体があります。
たとえば、東京都大田区の場合「飼い主がいる猫の去勢手術では1匹4,000円」「飼い主のいない猫の去勢手術では1匹7,000円」の費用を助成しています(平成29年現在)。
自治体によって申請方法や金額、対象となる猫が異なりますので、お住いの自治体の担当窓口に確認してみてください。

耳に手術済みの印

たくさんの地域猫の中で、手術済みかどうかを見分けるために、手術後の猫の耳の一部をカットすることがあります。
たとえば前述の東京都大田区の場合、助成の要件として「去勢又は不妊手術実施時に、手術済みであることが外見上識別できる処置(片方の耳先約1cmを水平又はV字にカットする)を施します。」とされています。

ペット保険は適応される?

最近、数多くのペット保険会社がサービスを始めているので、加入している方もいらっしゃるかと思います。
一般的なペット保険では、去勢手術や予防接種などは補償の対象外とされています。
ただし、一部の保険会社では割引制度がある場合もありますので、加入しているペット保険の補償内容を確認してみてください。

さいごに

少し長くなりましたが、いかがでしたでしょうか。
去勢手術は多くの猫が受けている手術とはいえ、いざ愛猫の手術を検討するとなるといろいろな不安や疑問が芽生えますよね。
かかりつけの獣医師に納得がいくまで相談し、愛猫の飼育環境や去勢手術のメリット、デメリットをしっかりと把握した上で、飼い主さん自身が決断してあげてくださいね。

関連記事になります。合わせてご覧ください。

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愛猫のために知ってほしいこと


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