腎不全とは、何らかの原因によって腎臓の機能が低下した状態のことを言い、腎不全の中でも慢性腎不全は、動物病院でも日常的に診察する機会の多い病気です。
「猫が慢性腎不全と診断されたけど、猫が動物病院を怖がってしまうので通院がストレスにならないだろうか?」
「元気や食欲があっても慢性腎不全と診断されたら治療しないといけないの?」
このような疑問を抱えていらっしゃる飼い主様もきっと多いことでしょう。
慢性腎不全と一言で言っても、病気の進行度合い(ステージ)によって治療の選択肢は変わってきます。
飼い猫が慢性腎不全のどのステージにいるのかを飼い主の方が理解することが大切ですので、
今回は慢性腎不全のステージ別の治療ガイドラインを解説します。
ガイドラインを知ろう!猫の慢性腎不全(慢性腎疾患)のステージ分類と治療について
猫の慢性腎不全は“クレアチニン”という数値によって4つのステージと、血圧と尿中のタンパク質の量によって更に細かいサブステージに分類されます。
このステージによって症状や必要とする治療法が変わってきます。
飼い主の方はまずはご自宅の飼い猫がどのステージなのかを知る必要があります。
※注釈:飼い主の方にとっては“慢性腎不全”という言葉のほうが馴染みがあるかと思いますが、ガイドライン上では“慢性腎疾患”といういい方が正しいです。
ステージ1
各検査結果
血液検査でクレアチニン値は1.6mg/dl未満と正常値内ですが、尿検査で尿の比重が低下している(薄い尿がでている)、超音波検査で腎臓の形がいびつになっている状態です。
参照:猫が腎不全に?クレアチニンとBUNの数値は何を表してるの?
症状
「水をよく飲んで大量の尿をする」という多飲多尿以外の症状はほとんどありません。
治療法
高血圧やタンパク尿でなければ無治療で経過観察し、定期検査を行っていきます。
※ガイドラインではこのように示されていますが、ステージ2への進行は時間の問題なので腎臓用の療法食開始が推奨されることがあります。
ステージ2
各検査結果
血液検査でクレアチニン値は1.6〜2.8mg/dl未満と正常値よりやや高い値を示します。
症状
多飲多尿以外の症状はほとんどないか、あっても軽度です。
治療法
腎臓病用の療法食の開始が推奨されます。
もし高血圧やタンパク尿がみられるようであれば降圧剤などの治療を開始します。
ステージ3
各検査結果
血液検査でクレアチニン値は2.9〜5.0mg/dl未満、貧血やBUNの高値などの異常が見られるようになります。
症状
多飲多尿以外にも、嘔吐や食欲不振といった症状が見られてきます。
治療法
ステージ2の治療に加え、脱水の程度に応じて点滴や貧血の治療、制吐剤の使用を検討します。
ステージ4
各検査結果
血液検査でクレアチニン値は5.0mg/dl以上、BUNの重度の高値などの異常が見られるようになります。
症状
いわゆる“尿毒症”という状態になり、元気食欲不振や頻回の嘔吐、むくみ、意識の低下、けいれんといった症状が出てくるようになります。
そしていよいよ腎臓が機能しなくなると尿が作られなくなり、“乏尿(ぼうにょう)”や“無尿(むにょう)”という状態になります。
治療法
ステージ3の治療に加え、強制的な栄養補給、透析や腎移植を検討する時期です。
※このようにガイドライン上では示されていますが、透析や腎移植は様々なハードルが高いため、通常は積極的な点滴治療と考えていただいていいでしょう。
参照:獣医師解説。猫の慢性腎不全の原因や症状や治療とは?回復はするの?
参照:猫の尿毒症の症状や原因、治療法とは?末期症状や余命も解説
飼い主の方の多くが悩む!慢性腎不全の猫の治療について
慢性腎不全の猫の飼い主の方の多くが抱かれる悩みを5つピックアップしました。
療法食を食べてくれない場合はどうしたらいい?
一言で療法食といっても色々なメーカーから様々な商品が販売されていますので、動物病院でいくつかサンプルをもらってみるといいでしょう。
最近はメーカーも猫が食べてくれないと商品の売上につながりませんので、何の病気もない猫でも喜んで食べてくれるよう工夫をこらしていますので、ぜひ試してみて下さい。
もし毎日同じだと味に飽きてしまうグルメな猫なら、様々なメーカーのものをローテーションしてもいいと思いますし、ステージ1〜2の比較的食欲がある猫なのであれば、いつもの食事(シニア用のもの)に療法食を少し混ぜてみて慣らしてみるのも一つの方法です。
もちろんステージ3〜4の猫で食欲が落ちている状態なら、療法食にこだわらずに食べられるものをあげたらいいでしょう。
猫にとって通院や入院はストレスじゃないか心配
当然のことですが、人間だって通院や入院は結構なストレスではないでしょうか?
人間の場合もストレスがあってもメリットがあるから(不調が改善されるから)通院や入院をするのであって、病院が楽しみ!という人はまずいませんよね。
そして行った治療のメリットがない場合は転院もしくは治療中止を考えるでしょう。
猫の場合も同じように考えたらいいのではないかと思いますが、あまりにもストレスがかかってしまうようなら、できるだけ通院回数を減らしてあげる工夫をしてみることはできると思います。
例えば皮下点滴で連日のように通院している場合ですが、動物病院によっては皮下点滴の手技を飼い主の方にレクチャーし、在宅治療が可能なようにサポートしてくれることがあります。
一度かかりつけの獣医師に相談してみてはいかがでしょうか。
治らない病気なら、腎不全の治療はしなくてもいいのでは?
確かに一度失われた腎臓の機能は回復しませんが、腎不全はステージに応じた治療をすると進行を遅らせることができます。
時々「腎不全が治るわけじゃないなら延命治療は希望しません」とおっしゃる飼い主の方がいらっしゃいますが、腎不全の治療は延命だけが目的ではありません。
治療することで「症状を和らげてあげる、体を楽にしてあげる」という効果があることを知っておいていただければと思います。
また、「一切の治療をせず自然のままにしてあげたい」と考えられる飼い主の方もいらっしゃると思いますが、もし飼い猫とできるだけ長く一緒に暮らしたいとお考えなのであれば、ある程度は医療の力に頼らざるをえないでしょう。
治療の止め時はいつ?
よくある質問なのですが、治療をどこまで続けるかは飼い主様の考え方次第のところが大きいため、こればかりは絶対の正解というのはありません。
個人的には、「猫がかなり弱っていて、色々手を尽くしてみたけれど症状も検査数値も改善が見られない」のであれば、治療を中止して大好きな自宅でのんびり過ごさせてあげてもいいのでは?と考えています。
腎不全は治らない病気とわかっていますが、治療をやめる決心がつきません
先ほどのお悩みとは対照的に、できるだけの治療をしたいという飼い主の方の場合です。
そのような飼い主様の中に「このまま治療を続けるのは飼い主のエゴなのではないか?」と葛藤される方もいらっしゃいます。
前述したとおり、腎不全の治療は延命だけではなく体調不良を緩和させることも期待できるわけですから、治療を継続することが全く無意味だとは思いません。
むしろ「できる限りの手を尽くした、やりきった」と感じるまで治療を続けられた方が、猫が亡くなった後に「あの時もっとこうすれば良かった」という後悔の念に駆られないように思います。
さいごに
腎不全に限らず動物医療に関して治療するかしないかの決断には飼い主様のご事情など色々な要因が複雑に絡んでくるため、絶対の正解というものはありません。
「本当は治療したいのに事情があってできない」など葛藤されることも多いかと思います。
そのような場合に備え、常日頃からご自身が相談しやすい獣医師を探しホームドクターとされることをおすすめします。
「動物病院に連れていきたいけど治療費はどのくらいかかるんだろう?」
「愛猫の病気を治してあげたいけど高額費用を支払う余裕がない…」
という飼い主さんはとても多いです。
動物病院で治療する場合、病気によっては10万円以上かかってしまう場合もあります。
動物病院で治療すれば助かった命は実に多いです。
経済的な問題で愛猫の寿命を縮めないためにも愛猫が元気なうちにペット保険に加入することが大事になります。
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