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猫の熱中症対策まとめ。おすすめのグッズや室温など獣医師が徹底解説

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もともと、ネコの祖先は砂漠地帯で生活していたため、猫は暑さに強い動物だと思われています。
「猫はこたつで丸くなる~」の歌にあるように冬の方が弱いと思われています。
しかし、実は、猫は非常に暑さに弱い動物です。
発汗によって体温を下げる人間とは違って、猫は汗腺が肉球くらいにしかありません。
そのため、体毛を舐めるか、口呼吸による気化熱を利用することでしか体温調節ができず、効率よく体温を下げることができないのです。
また、予防の為にと「水を飲んでね」といって飲んでくれるものでもありません。
つまり、人間に比べて、熱中症になるリスクは、はるかに高いのです。
熱中症は、重症の場合は50%の確率で亡くなる非常に危険な病気です。
熱中症の危険性を知り、予防がいかに大切かをお伝えするとともに、実際の予防方法についても解説いたします。

熱中症とは?

熱中症とは、暑さにより体温調節が出来なくなる機能障害のことです。
熱射病や日射病などともいわれます。
通常では、体温が高くなると、内臓の血管が縮むと同時に、皮膚や筋肉に分布している血管が広がり、体の中心部から周辺部に血液が移動します。
体の表面に集まった血液は「伝導」「対流」「放射」「気化」によって熱を外界に逃がし、体温を元の状態に戻そうとします。
血液を冷却するために、心拍出量や心拍数の増加、頻呼吸(パンティング)といった症状も認められます。
それでもなかなか体温が下がらず、高体温の状態が続いてしまうと、収縮していた内臓の血管でも拡張が起こり、体を循環する血液量が低下し、熱を外に発散するメカニズムが障害を受けてさらに体温が上がってしまいます。
要するに、体の内側も外側もオーバーヒートしてしまうという状態です。
猫の平熱は38~39℃前後ですが、深部体温(直腸温)が41℃を超えた場合に熱中症と診断されます。
41℃を超えると、熱によって脳にまでダメージが及び、43℃を超えると体中の様々な器官が機能不全に陥る「多臓器不全」を起こし、急激に死亡率が高まります。

猫が熱中症にかかりやすい時期

猫が熱中症にかかりやすい時期はいつでしょうか?
もちろん、夏場は当然なのですが、実は4月頃から熱中症の危険があります。
具体的には4月下旬のゴールデンウィークから10月頃まで、およそ1年の半分にあたります。
特に、暑くなり始め、梅雨で湿度の高い5月から6月の初夏や、涼しくなる前の晩夏は油断しがちなので、くれぐれも注意が必要です。

熱中症の原因

高い気温

気温が30℃を越えた状態が続くと危険です。
太陽の直射による熱のほか、太陽によって温めれた地面からの輻射熱によって体温が上がりやすい状態になっています。
動物は人間よりも地面に近い位置にいますので、より熱の影響を受けやすく、熱中症にかかりやすいです。
室内でも安心はできません。
また、トリミングサロンで、ドライヤーを長時間あてることによって発症することもあります。

高い湿度

気温だけでなく、湿度が高い場合、熱中症の発症率が高まります。
人間でも、梅雨など、大して気温が高くないのに、息苦しいと感じる時がありますよね。
猫が体温を下げるときは、パンティングと呼ばれる激しい呼吸をして、そこから気化する体液の気化熱によって体温を下げます。
猫はこのパンティングによる体温調整の割合が非常に高いので、湿度が高いと水分がうまく蒸発せず、気化熱で熱を放散できませんので、熱中症のリスクが高くなります。

換気不足

猫が体温を外界に放出する際は、体表面と気体とが接触することによって熱を移動する「対流」という方法もわずかながら利用しています。
対流が起こるには、体温よりも低い温度の空気を継続的に体表面に当て続ける必要があります。
扇風機のしくみです。
しかし、窓を閉め切った部屋や、車の中など、換気が悪い場所だと空気の入れ替えが起こらず、体温と同じか、体温よりも高い空気が体に当たり続け、この場合は対流による熱の放散が起こりません。
最も多いのが、車内への閉じ込めです。
気温が22℃のとき、1時間で車内温度は47℃に達するとされています。
また、気温が31℃のときはわずか10分で40℃に達し、1時間で60℃に達するともいわれています。
さらに気温が29℃、湿度90%の車内に閉じ込められた猫の50%は平均48分で死ぬという恐ろしいデータもあります。
猫の場合は、車の中では通常クレートに入れられていることが多く、換気不足により、対流による放熱も妨げられますので、非常に過酷な環境です。
人間の体感温度から、少しくらい大丈夫かなというのは大間違い、大変危険です。

激しい運動

激しい運動は筋肉を収縮させ、体温を上昇させます。
冬であれば体温の維持に役立ちますが、夏の場合はオーバーヒートに陥る危険性が高まります。
猫は熱い時に犬に比べてあまり動こうとしないので、熱中症のリスクは少ないですが、おもちゃで遊んだりした場合は気を付ける必要があります。

脱水

猫は舌を外に出して激しく呼吸する、パンティングによって唾液を気化させ体温を下げますが、脱水していると気化する体液の量が減り、熱の放散がうまくできなくなります。
次第に体の水分量が減り、脱水症状に近づいてくると、猫はパンティングによる熱の放散を諦めて、脱水予防に努めるようになります。
つまり体温が上がりっぱなしになるということです。
ちょうど水無しでサウナに閉じ込めるようなものです。

感染症

ウイルスや細菌といった病原体に感染すると、体は病原体が繁殖しにくくするように体温を高めます。
これがいわゆる「発熱」で、熱中症とは異なります。
特徴は、熱中症にかかったときのようなパンティングが起こらないことです。
しかし、感染症にかかって熱がある時に、室温調整を怠ると、体温が上がりすぎて、いつのまにか熱中症に移行している場合があります。

熱中症にかかりやすいリスクファクター

どの猫もおなじだけ熱中症にかかるというわけではありません。
同じ環境にいても、熱中症になる猫もいれば、ならない猫もいます。
それには、猫それぞれのもつリスク因子が関わっています。
熱中症にかかるリスクファクターは以下の通りです。

短頭種

ペルシャやエキゾチックショートヘア、スコティッシュフォールド、ヒマラヤンなどのマズルが短い短頭種の猫では、つぶれた鼻先によって空気の通りが悪くなり、効果的な気化が妨げられます。
また、空気を吸ったり吐いたりする時の空気抵抗が大きくなる分、呼吸筋を激しく収縮しなければならなくなり体温が上がりやすくなってしまいます。

肥満

肥満の猫は、分厚い皮下脂肪に覆われ熱が放出しにくいので、熱中症のリスクが高いです。
さらに、首周辺の脂肪は呼吸機能を低下させ、体温調節を妨げます。
人間でも「太った人は汗っかき」というのは、体に熱がこもりやすいため、熱を汗で放散する必要があるからなのです。
猫の場合は、太っているからといってたくさん発汗できるわけではないので、より危険性が高まります。

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黒い被毛

黒い被毛は太陽光を吸い込みやすいため、その分温度が上がりやすくなり、熱中症にかかりやすくなってしまいます。

長い被毛

猫の被毛が厚いと、体表面から放射と対流によって放出される熱が減り、熱中症にかかりやすくなります。
猫における厚い被毛を人間で例えると、真夏にダウンジャケットを着込むようなもので、内側に熱が全てこもってしまいます。

持病

スムーズな呼吸を妨げるような様々な呼吸器系の病気や、体温の放出を促す循環器系の障害によって熱中症の発症リスクが高まります。
具体的には心不全で心拍出量が少なくなったり、喘息で呼吸困難が続いている場合などです。
また、甲状腺機能亢進症 による基礎代謝の増大や腎臓病のある猫は、脱水が起きやすい傾向があります。

子猫

生後7週齢未満の子猫は体の生理機能が未発達で、体温調節が上手くできず、熱中症にかかりやすいです。
自分の限界を知らず、後先考えずに動き回ってしまうことなども主な原因です。
自分の症状に気づきにくいため、重症化しやすい傾向があります。

高齢猫

高齢の猫の場合は、逆に、生理機能が衰えていて、体温調節が上手くできず、熱中症にかかる危険性が高まります。
また、高齢の猫は呼吸筋が弱く、パンティングをうまくできなかったり、生体を高熱から守ってくれる熱ショックタンパク質の減少などが主な原因で、暑さに弱く、熱中症になりやすい傾向があります。

北国育ちの猫

メインクーンやノルウェージャンフォレストキャットなど寒冷地で生まれた猫や、アメリカンショートヘアも体内に脂肪を貯めこむ体質なので、熱中症になりやすい傾向があります。

熱中症の症状

熱中症の症状はいくつかの段階に分かれています。
初期には軽い脱水症状程度ですが、この時期に異常に気付けるかどうかが予後を大きく左右します。

初期の症状

・体温の急激な上昇(40℃以上)
・浅く速い呼吸をする
・元気がない
・日陰や涼しい場所に行きたがる
・うずくまり動かない
・肉球(パッド)に汗をかく
・耳が熱い
・心拍数の増加

熱中症の症状

・口を開けてハァハァと舌を出しあえぐような荒い呼吸=パンティングをする
・目や口腔粘膜が充血してくる
・悪心(おしん:吐き気)を示したり、実際に嘔吐や下痢をする
・ぐったりしている
・よだれを垂らす
・ふらついて倒れる
・呼びかけへの反応が遅い

重症の症状

熱中症が進行すると脳や臓器に障害が現れ始めます。
・虚脱、意識の混濁、失神
・筋肉のふるえ
・全身性の痙攣(けいれん)
・呼びかけに反応しなくなる
・吐血や下血(血便)、血尿
・酸素をうまく取り込めないためにチアノーゼを起こす(皮膚や粘膜が青白い)
・最悪の場合はショック症状(血圧が低下して、血液が全身に行き渡らない状態)を起こし、死亡する

遅れて現れる症状

熱中症にかかったにもかかわらず、それに気づかなかったり、見かけ上の症状が消えたことに安心して病院に連れて行かなかったりすると、3~5日後になって、腎不全や肝不全、呼吸不全や、播種性血管内凝固症候群(DIC)などを発症し、死亡することもあります。
気付いたときは大丈夫そうでも、熱中症の可能性があれば、必ず病院を受診しましょう。

猫を熱中症にしないためにできる対策とは?

熱中症を発症してしまうと、治療を行っても命を落としてしまう危険性があります。
熱中症は防ぐことができる病気ですので、正しい対策をして猫の命を守ってあげてください。
猫の熱中症の予防には部屋の温度管理と充分な水分補給が重要で、室温は30℃以下、湿度60%以下の状態を保ってあげるのが理想的です

完全室内飼いにする

暑さ対策だけでなく、屋外には感染症、交通事故などたくさんの危険があります。
室内環境を整えれば、外に出なくてもストレスなく暮らしていくことも十分可能ですので、猫の健康と安全を確保するためにも外に出すのはやめましょう。

エアコンをつける

エアコンで温度・湿度管理を行うことで、天候に左右されることなく、留守中も安心・安全です。
設定温度は27~28℃が目安です。
除湿機能があれば使用しましょう。
また、エアコン嫌いな子や体が冷えてしまった時のために、別の部屋に行けるようにしたり、エアコンの風が直接当たらない場所に毛布などを置いておくのもおすすめです。
エアコンが故障したり、タイマーで止まってしまったりすることもありますので、他の対策も必ず併用しましょう。
猫は人間と違って汗をかきませんので、空気を当てることによって体温を下げることはあまり意味がありません。
「窓を開けた状態で風通しをよくしておく」とか「扇風機をかけた状態にしておく」ということだけで、熱中症を予防することはできませんので注意が必要です。

室内に涼めるスポットを作る

猫が自然に涼めるような場所を与えて、自由に行き来できるようにしてあげましょう。
クールマットや冷却効果のあるアルミを使った猫つぼなど、冷却グッズもいろいろ売られています。
利用頻度は少ないかもしれませんが、エアコンの故障時など、いざという時にも役立ちます。

換気をする

基本的には窓を開けて通気を良くしましょう。
ただし、空気が体温よりも高い場合は、ちょうどドライヤーをかけたときのように逆に体温が上がってしまいます。
対流熱伝達が起こるためには「空気の温度が体温よりも低い」ことが条件になりますので、流れる風があまりにも熱い時は逆に窓を閉め、エアコンで室温調整してください。
同じように、熱い室内で扇風機を回しても、熱い空気を当てることになり、意味がありませんので、扇風機を使っているからと安心してはいけません。

室内の温度が上がらないようにする

暑い中、自ら日光浴して寝ている間に熱中症になる猫もいます。
カーテンを閉めたり、グリーンカーテンをするなどして、直射日光を避け、室内の温度が上がらないようにするとともに、室内の冷えた空気が逃げないようにしましょう。

水のみ場をたくさんつくる

脱水を防ぐためにも、あらゆる場所に水を置きましょう。
いろいろな種類の器を使ったり、電動流水器を利用するなど、工夫してできるだけこまめに水分補給させるようにしましょう。
ウェットフードやスープ状のおやつを食べさせて水分補給させるのも良い方法です。

閉じ込め事故に注意する

狭い場所に閉じ込められていないか、猫の所在を把握しておくことが大事です。
涼しい部屋にいると思っていたら、押し入れに閉じ込められていたなどという事がないように、外出時には、必ず部屋にいるか確認し、猫が入り込みそうな狭い空間があれば、入れないように塞いでおきましょう。

ブラッシング

毛量の多い猫は、ブラッシングでアンダーコートを取り除き「サマーカット」をすることで、通気を良くし、放熱性を高めると効果的です。
ただし、地肌が見えるくらい短く刈り込んでしまうと、太陽光が直接皮膚に当たって体温が上がりやすくなると同時に、紫外線による皮膚ガンの危険性も高まりますので、地肌が見えない程度にとどめておきましょう。

ストレスを与えない

ストレスが熱中症のきっかけになることもあります。
基本的には、自由にしてあげましょう。

おすすめグッズは?

ペット用の冷却マットは様々な商品がありますが、保冷材を使ったものは袋が破れ中身を猫が口にしてしまった場合中毒症状が出ることもありますので注意が必要です。

ペッツルート ひえひえアルミニャンコつぼ

ひんやりシート クールマット ひえひえ爽快

ペットひんやり大理石マット

ペットセーフ ドリンクウェル アバロン セラミック ペットファウンテン

熱中症を早期発見するためにチェックするべきポイントはここ!

口腔内の粘膜の状態

平常時、歯茎の粘膜にはぬるぬると潤いがあります。
もし、触った感触がベタベタしていたり渇いていたりした場合は、脱水の可能性があります。

目の輝きや目の周囲の状態

脱水により結膜や皮膚が乾燥すると、目の輝きがなくなり、目が落ち窪んでしまいます。
一見目が小さくなったように見えます。

耳の温度

耳の「耳介」と呼ばれる、立っている部分は、毛が薄く、猫の体温を知るのに最適な場所です。
また、耳の中に指を入れ、もし普段より熱ければ高体温の状態かもしれません。
いつも触っておくことで異常に早く気付くことができます。

背中の皮膚をつまんで離してから戻る時間

皮膚の細胞に水分が行き渡っていれば、背中の皮膚をつまんで離せば、1秒程度でぷるんともとに戻ります。
戻る時間が遅ければ、脱水を疑いましょう。
ただし、肥満の猫は、脱水でなくても戻るのが遅いこともあります。

さいごに

最近では、小さな子供や高齢の方がなくなるケースが増えている熱中症、動物も例外ではありません。
猫の熱中症は、適切な室温と湿度を保ち、風通しをよくすることで必ず防げます。
予防対策をしっかりと把握し、ケアしてあげましょう。
「完全室内飼いにすること」「エアコンで室温調整すること」「飲水を切らさないこと」という3点を守るだけでほとんどのケースは防ぐことができます。
ただ、エアコンをつけているからと安心していてはいけません。
エアコンの冷房をつけたつもりで外出したら、エアコンが故障していたり、タイマーで止まってしまっていたというケースもあります。
猫は自分で涼しいところを見つけるから、エアコンはいらないなんて言うのは、もう一昔前の話です。
猫だって最近の異常な気温にはまったく対応できません。
猫と人間では体温調節の仕組みが異なることを日頃から意識し、大切な家族を守りましょう。
既に症状が進行している場合、自宅では対応しきれないことが多いので、一刻も早く病院に連れて行き専門的な処置を施す事が大切です。
言葉を話せない猫の異常には気付きにくく、さらに、猫は我慢強い動物なので、私たちが猫の様子がおかしいと気づいた時には重篤な状態になっていることも多いです。
初期症状が出ている段階で気付いてあげられるように、熱中症の危険がある時期は。いつも以上に気を配ってあげましょう。





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