骨折といわれるとピンとくるかと思いますが、猫は脱臼もすることをご存知ですか?
猫も、強い衝撃や発育不良などが原因で脱臼をすることがあります。
脱臼は軽度で症状のないものから痛みを伴う重度のものまで様々な症状があり、同時に捻挫や骨折をしているケースも少なくありません。
脱臼は一度起こると癖になりやすく、重度になると手術が必要となります。
猫の脱臼について、生じやすい部位や治療方法、治療費についてまとめてみました。
また、脱臼しないためには、どのような点に注意したらいいのか?も併せて解説していきたいと思います。
目次
脱臼とは?
脱臼とは、骨が関節から外れてしまった状態のことをさします。
関節は二つの骨が筋肉や靭帯につながれる形で構成されています。
何らかの理由で、どちらか一方の骨が本来の位置からずれてしまうことで発生します。
二つの骨が完全にずれ、関節面が接触していない状態を「脱臼」、ずれてはいるものの関節面が部分的に接触している状態を「亜脱臼」といいますが、一般的にはどちらも脱臼と言ってよいでしょう。
脱臼を起こした関節には極端に強い力がかかっているため、多くの場合、捻挫(ねんざ)や骨折を伴います。
脱臼の原因って何?
交通事故などの大きなものから、脚や尻尾をドアに挟まれる、飼い主に踏まれる、はしゃいで転んでしまった、何かにぶつかってしまった、急に方向転換した、といった日常的な場面でも脱臼を引き起こすことがあります。
その中でも、もっとも多い原因は、事故などの外傷です。
猫の場合は、家の中よりも外に出てしまった際に起こるケースが多いです。
猫同士のケンカなども原因になります。
尾で一番多いのは、尾を人間がひっぱって脱臼することが多いです。
また、関節腫瘍や関節炎などの病気から脱臼に発展する事もあります。
膝蓋骨脱臼は事故などの外傷だけでなく、骨にまつわる栄養障害や遺伝的な要因でも発症します。
遺伝の場合は生まれつき関節が外れやすいので、犬同様に膝蓋骨脱臼の症状をもっている猫は、繁殖をしないことをおすすめします。
猫が脱臼してしまうときに、ほとんどのケースで共通していえるのは、「完全に不意をつかれた状況である」ということです。
いくら運動神経の良い猫であっても、不意をつかれてしまうと、やっぱり防ぐことはできないのです。
脱臼しやすい場所は?
・顎の関節
・肩の関節
・肘の関節
・手首の関節(手根関節)
・股関節
・膝の関節
・足首の関節(足根関節)
・尾の関節
など、関節の有るどこの部位でも脱臼する恐れがありますが、猫の場合は特に、股関節や尻尾の尾椎に起こりやすいです。
また、犬よりは少ないですが、いわゆる膝のお皿である膝蓋骨の脱臼も起こります。
脱臼の症状は?
軽度の脱臼の際は、症状が分かりづらいため、気付かないことが多いといわれています。
脱臼をすると、見た目の変化としては、脚の長さや関節の形が変わったり、足が異常な膨らみを見せたりします。
猫は片脚を上げて歩いたり、逆に引きずるように歩くこともあります。
神経の問題から色々なところに排泄をするなど、排泄のコントロールが上手にできないこともあります。
この原因としては、尾の脱臼の可能性が考えられます。
猫の尾の付け根には、様々な神経が集中しています。
ここが障害を受けると、歩き方がおかしくなってしまったり、腰から下が動かなくなってしまったり、尿や便の排出を調節する神経も存在しているので、尿や便が排泄できなくなってしまう可能性があるのです。
身体に触られるのを嫌がる時は症状を隠している可能性がありますので、「普段と様子が違うな」という気付きや観察を大切にしなければなりません。
逆に痛みがひどい場合は元気がなくなり、動かずにじっとしていたり、食欲が低下することもあります。
股関節の脱臼の場合、脱臼している側の脚を地面に付かないで歩くようになります。
地面に付いていても逆の脚でかばったり、ふらつきがみえることもあります。
病院にいくまでに注意する事
悪化を防ぐためにも、可能であればネコちゃんが動き回るのを制限し、患部はできるだけ触らないようにします。
脱臼の治療方法について
脱臼は整復しても、再発が多いといわれています。
無理にはめてもすぐに外れるため、基本的にはしっかりと治療をする必要があります。
症状が軽度で、生活に支障が出ていないと飼い主さんが感じていても、その部位をかばって他の部位を痛めたり、今後、骨が変形することで、手術の効果が低くなる可能性がありますので、早い段階で治療を行う必要があります。
脱臼の整復
脱臼した関節を元の位置に戻すことを整復といいます。
絶対に飼い主が自分で行うことはせず、かならず動物病院で行います。
軽度のものであればその場で整復することもありますが、痛みが強く、猫が暴れてしまうとしっかりとした整復ができず、完全に元の位置に戻らないまま固定してしまう可能性がありますので、通常は全身麻酔をかけて、体の力が抜けた状態で行います。
外科手術
猫が脱臼したことによって、骨折や靭帯の損傷を伴っている場合は、外科手術によって損傷部の治療が行われます。
手術後は患部を数日~数週間安静にする必要がありますが、入院ではなく家庭で看護する場合はケージなどに入れて動きを制限する必要があります。
排泄の補助
脱臼したのが尾で、排尿・排便困難が生じてしまったときは、カテーテルを挿入して排尿の補助や軟便剤の注入で排便の補助を行います。
痛みの除去
膝蓋骨脱臼の場合はレーザー治療などで、一時的に炎症や痛みを抑えることがあります。
尾の切除
尾の神経が完全になくなってしまった場合には、尾を切除する必要があります。
猫は尾を上にあげないと、排便できないことや、尾と肛門の間に便が溜まってしまうことで、不衛生になり、他の病気の併発を伴ってしまう可能性があるからです。
また、尾の付け根には排泄神経の他にも、猫にとって重要な神経が束のように集結しているため、動かせない尾を残していることで、他の重要な神経も傷つけてしまう恐れがあるからです。
猫の脱臼って放置してもいい?自然治癒するの?
脱臼に気付き次第、すぐに病院へ行く必要があります。
脱臼の具合によっては、猫も痛がらないことは、たしかにあります。
しかし、痛がっていないから良いのではなくて、問題はそのあとのことです。
脱臼したまま放置してしまうと、骨をつないでいる筋肉がその位置のまま固まってしまうのです。
また、脱臼している部位には、過剰な負荷がかかっているため、その部位が悪化してしまい、最悪の場合は、関節接合部の骨の骨折に発展してしまい、足が動かなくなってしまうこともあるからです。
猫があまり痛がらないので、様子をみてもいいかな?というのは大きな間違いです。
脱臼の整復にかかる費用
治療費は動物病院や症状により異なりますが、日本獣医師会が公表している「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査(平成27年度)」を参考にすると、脱臼の整復手術には10000円から25000円前後といわれています。
その他にも、レントゲン料に5,000円から10000円前後、全身麻酔を行った場合は20,000円から25,000円前後の麻酔料が発生します。
大きな外科手術が必要な場合は50000~100000万円程度かかります。
自宅でのケア
症状によっては手術をせずに、定期的な通院と自宅療養をする中で元通りの生活ができるようになることもあります。
脱臼の部位によってはマッサージなどのリハビリができ、整復に役立ちます。
身体能力の高さゆえに動きを制限することが難しいため、状態によってはケージの中で過ごすなど、運動を制限する必要があります。
脱臼の予防について
脱臼を防ぐためには、体重を増やさないことも大切といわれています。
四肢の脱臼などは治療後、特に運動も制限されやすいので、食事も適量な分量を改めて考える必要があるでしょう。
高い所からの落下も脱臼の原因になりますので、家の中でもフローリングなどの滑りやすい床がある部屋は注意が必要です。
背の高い家具などから頻繁に登ったり下りたりしているのであれば、滑らないように床にカーペットなどを敷くことをおすすめします。
普段の生活の中でも予防できることがありますので、ケガをする前に室内の環境と普段の様子を見直しましょう。
いたずらに、高いところにいる猫をビックリさせてしまう行為などは避け、自分の背後に猫がついてきていないかなどを確認して、なるべく怪我をさせないように気を付けてあげましょう。
さらに、高齢猫の場合は、カルシウム不足や年齢のせいで、ほんの些細なことで脱臼をしてしまうケースも多々ありますから、あまり高いところに登らせないようにするなど、慎重に気を配ってあげることが大切です。
さいごに
顎の脱臼の場合などは特に、自分で整復しようとしてしまう場合がありますが、状態を余計悪化させたり、もし戻っても、関節周囲を傷つけたり炎症を起こしてしまう可能性があり、しばらくたってから痛みが出たりしますので、絶対に自分で行わないようにしてくださいね。
症状の軽い脱臼の場合は気付くのが遅くなってしまうことがありますので、日頃からスキンシップを取って猫の異常にいち早く気付いてあげられるようにしましょう。
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