腫瘍

猫の乳腺腫瘍(乳がん)の症状や治療法は?手術費用は?余命はどのくらい?

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「愛猫が乳がんになってしまったけどどのくらい生きることができるんだろう…」

「もし乳がんの手術をしたらどのくらいの費用がかかるんだろう…」

そのような不安はありませんか?

猫も避妊をしていない場合は乳がんになるリスクがあります。

今回は猫の乳がんについて獣医師が詳しく解説します。

それではどうぞ。

乳腺腫瘍とは?

猫の乳頭(いわゆる乳首)は、通常左右に4つずつ、合計8個付いています。
まれに乳頭が4つ以上あることもありますが、病気ではありません。
乳腺は乳頭(乳首)に沿って左右に1列ずつあります。
乳腺腫瘍とは、いわゆる乳がんのことで、乳腺にがんが発生した状態です。
腫瘍はどの乳腺にも発生する可能性を持っており、単独で現れることもあれば複数同時に現れることもあります。

乳腺腫瘍の発生率

乳腺腫瘍は避妊手術をしていないメス猫の発症率が圧倒的に高いです。
発病する年齢としては、10~12歳以降の中年齢以降の猫に多く発症します。

乳腺腫瘍の原因

ホルモンや過去の乳腺炎の罹患、遺伝などが考えられていますが、明確な原因はわかっていません。

乳腺腫瘍の症状

初期症状としては、乳頭(乳首)の周りに固いしこりができます。
大きさは発生してから気付くまでの期間によって異なります。
飼い主さんが触っていて気づくことが多く、猫自体は痒みや痛みなどの自覚症状は一切ありません。
他の症状としては、乳頭の腫れ、乳頭からの分泌物、胸やお腹を触るのを嫌がる、腋の下や腿の付け根が腫れている、食欲低下と体重減少(悪性の場合)などが認められることもあります。
しこりを放っておくと徐々に大きくなり、最終的には自壊(じかい)といって腫瘍が破裂し、花が咲いたようになる「花咲がん」という状態になります。
自壊した腫瘍からは、独特の悪臭を持った血液や体液が出て、二次感染で化膿することもあります。
また、猫の乳腺腫瘍は肺への転移が早く、初診時に転移していることも少なくありません。
肺転移や胸部への侵襲が広範囲に及ぶと胸水が溜まったり、胸膜炎によって呼吸不全を起こすこともあります。

猫の乳腺腫瘍の悪性度

乳腺腫瘍だからといってすべてが悪性というわけではなく、良性の場合もあります。
犬の場合は、良性と悪性の比率が50%ずつですが、猫の乳腺にできる腫瘍の場合は80~90%が悪性です。

乳腺腫瘍の診断方法

猫の乳腺腫瘍は悪性である場合高いため、しこりに針を刺して細胞を顕微鏡で検査するという針吸引検査は避けた方がよいでしょう。
悪性か良性かの判断は基本的に、乳腺腫瘍を外科的に切除してから病理組織検査に出して、確定診断を行うことが多いです。

乳腺腫瘍の予防方法

癌を予防する方法なんてない!と思われがちですが、猫の乳腺腫瘍においては予防方法があります。
最も効果的な予防方法は、避妊手術です。
避妊手術をするというだけではなく、もっとも効果的に予防するためには、生後何カ月までに受けさせるかという事が重要です。
生後半年までに避妊手術を行った際、乳腺腫瘍を予防できる確率は91%、生後1年までで86%予防ができるといわれています。
その後は一気に予防率が下がり、生後1年~1年半までは11%、それ以降の手術では予防効果はないと報告されています。
乳腺腫瘍を防ぐためには、避妊手術を可能な限り生後1年以内に受けさせましょう。
また、手術以外にも日頃から愛猫の体をチェックするようにすることで、腫瘍ができても早期発見につなげることができます。
しこりができていたらすぐ病院に連れていきましょう。

乳腺腫瘍ができたら余命はどれくらい?

猫の乳腺腫瘍は悪性が多いので、残念ながら余命はあまり長くありません。
手術をしても余命は、長くて約3年程度と言われています。
猫においては、腫瘍が小さければ小さいほど予後が良いとされています。
術後の生存率の具体的な目安は、直径2cm以下では3~4.5年、直径2~3cmでは2年、直径3cm以上では6ヶ月とされています。
なお数値は、ある特定の腫瘤ではなく、同時に発生した腫瘤全ての総計です。
場合によっては手術をせず病気をケアして生きていく方が、痛みを伴わず長く生きられることなどもあるようです。
ただし、猫の3年は人間でいえば15年相当ですので、手術をするという選択肢を積極的に考慮したほうが良いでしょう。

乳腺腫瘍の治療方法は?

猫の乳腺腫瘍は悪性である確率が80%と高く、また進行も早いことから、なるべく早めの処置が必要とされます。
腫瘍ができてしまったら、基本的には手術をすることになります。
乳腺腫瘍の摘出手術の場合、大きく分けて3つの選択肢があります。

腫瘍の部分摘出

現時点で判明している腫瘍のみを手術によって取り除きます。
この手術が最も簡単ですが、再発の可能性が非常に高くなります。
すでに転移が確認されている場合などに選択される治療法です。
手術費用は3万~6万円程度です。

片側乳腺の切除

猫では、同じリンパ管でつながっている乳腺同士の間でガンが発生しやすいため、腫瘍が発生した場所のみならず、その腫瘍がある側の乳腺をすべて切り取ってしまう手術が最も多く行われます。
切除範囲がその後の生存期間に影響を与えるため、消極的な切除ではなく、可能な限り広範囲に切除することが大切です。
消極的な切除では、その後の手術部位に再発がみられる確率が高くなります。
片側全ての乳腺を取り除いた場合も、反対の乳腺に腫瘍が再発する可能性はあります。
費用は10万円程度です。
手術の傷が、わき~鼠経部までかなり広範囲になりますので、術後の痛みが強く、数日~1週間程度の入院が必要になります。

全乳腺の切除

全乳腺の切除をする場合は、まずは片側の乳腺切除を行います。
1カ月程経ってから反対側の乳腺切除を行います。
時間をおいて2回手術する理由としては、いくつかあります。
一度にすべての乳腺を切除するのは負担も大きいですし、全ての乳腺を切り取ると皮膚が足りずに縫合ができなくなってしまいます。
さらに、無理して縫合すると胸が広がるのを阻止してしまうため、呼吸状態の悪化を招いてしまうからです。
費用は20万程度かかります。
いずれの手術を選択する場合でも、術後のケアを重視することが大切です。
体の抵抗力を高める為に免疫力を高める努力をしたり、がん細胞が育たないように食事中の糖質を減らすような試みが必要になります。
他には、放射線治療、抗がん剤治療、免疫療法、光線療法などがあります。
しかし、例え腫瘍の大きさが小さくても悪性度が高く、他に転移がみられる場合は、これらの治療を併用したとしても、残念ながら根治することは難しいでしょう。

乳腺腫瘍は手術したほうがいいのか?

乳腺腫瘍が発生するのは中~高齢の猫が多く、手術の際の麻酔もリスクがあります。
特に腎不全を患っていたりすればそのリスクはさらに上がります。
また、発見時にすでに転移があった場合は手術をしても再発する可能性が非常に高く、転移に関しては、手術は無意味です。
では、手術をしないという選択肢もあるのでしょうか?
まず、発見時に転移がない場合は基本的には手術を強くお勧めします。
手術のみで完治する可能性もあるからです。
では、転移がある場合は手術の必要はないのでしょうか?
悪性のがんは急速に大きくなることが多く、次第に皮膚を突き破って破裂し、自壊します。
腫瘍自体が壊死し、ドロドロと液体が流れたり、耐えがたい悪臭を発します。
すると、猫はその部分を気にしてなめ続けるようになり、その結果、細菌感染を併発し全身状態が悪くなることもあります。
自壊が始まったら、洋服を着せて舐めないように保護したり、常にエリザベスカラーを装着しなければならなくなり、生活の質は非常に下がります。
その時点ではさらに全身状態が悪化していて、麻酔のリスクがさらに跳ね上がりますし、しこりが大きくなった分、手術範囲も大きくなり、体にも負担がかかり、傷の治りにも時間がかかります。
もし、転移があっても、腫瘍が小さい場合はしこりを切除する手術をした方が良いでしょう。
どうしても麻酔のリスクが高い場合は、経過観察を行うこともありますが、腫瘍の増大が早い場合や自壊が始まった場合は、生活の質(QOL)を高めるために、やはり手術を検討せざるをえません。
判断は非常に難しくなりますので、動物病院の先生とよく相談してくださいね。

さいごに

乳腺腫瘍の予防に避妊手術が効果的であるというお話をしましたが、1年過ぎてしまったら予防効果はありません。
なるべく早めに避妊手術を受けさせましょう。
では、1年過ぎてしまっていたらもう避妊手術をする意味がないのか?というとそんなことはありません。
加齢に伴って発生のリスクが高まる子宮蓄膿症の発生をなくすことができますし、発情はホルモンバランスが大きく変化し、猫にとってストレスになりますし、避妊手術をしている猫の方が、寿命が長いという報告もありますので、1年過ぎていても避妊手術は行った方が良いでしょう。
子猫を飼い始めたら、1年はあっという間です。
飼い始める前、もしくは飼い始めたらすぐに動物病院で避妊手術の相談をするようにしてください。
猫の乳腺腫瘍は、残念ながらほとんどが悪性です。
広範囲な切除手術が必要になりますし、転移も早いので、しこりに気付いた時には様子を見たりせず、すぐに病院で診察を受けてください。
痛がるなどの自覚症状がほとんどなく発見が遅れることが多いため、毎日体を触ってコミュニケーションを取り、早い段階で発見してあげることが最も大切です。





愛猫のために知ってほしいこと


「動物病院に連れていきたいけど治療費はどのくらいかかるんだろう?」

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