生殖器の病気

獣医師が猫の避妊手術後を徹底解説。性格は変化は?発情はする?

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「避妊手術の前後で、猫にはどんな変化があるの?」

「避妊手術から退院してきた猫が、元気がないみたいで心配…」

「避妊手術をしたから発情はしないはずなのに、発情行動の様なものがある」

このような疑問や不安はありませんか。

今回は、猫の避妊手術の「術後」に焦点を当てて解説したいと思います。

避妊手術を終えたばかりの猫を飼っている飼い主さんは是非チェックしてみてくださいね。

猫の避妊手術とは

避妊手術とは、メス猫の生殖器である卵巣および子宮を取り除く手術です。
無計画な妊娠・出産により殺処分される不幸な子猫の減少、子宮や卵巣、乳腺など生殖器に関する病気の予防といった目的で行われています。
また、生後4~9ヶ月ほどで性成熟するとみられるようになる「昼夜問わず大きな声で鳴く」「外に出たがる」などのメス猫の発情期に関する行動を軽減させる目的もあります。

猫の避妊手術の方法は?

猫のお腹をメスで切開し、腹腔内にある子宮と卵巣を取り除きます。
性ホルモンが分泌される卵巣のみを摘出する方法もありますが、子宮を残しておくと、子宮内に膿が溜まる「子宮蓄膿症」など子宮の病気のリスクが残ってしまうため、最近ではあまり行われていません。

猫の避妊手術の入院期間

避妊手術が初めての入院という猫も多いので、どのような反応を示すかわからずに不安ですよね。
避妊手術前後の流れは、動物病院の方針や猫の様子によって異なりますが、多くの場合は手術当日に入院し、1~2日後に退院するケースが多いでしょう。
避妊手術は子宮と卵巣を取り出すため、開腹手術が必要です。
卵巣や子宮につながる重要な血管を傷つけないように結紮しながら慎重に行いますが、術中や術後には出血がないかを確認する必要があります。
また、全身麻酔から醒めたばかりの猫に呼吸や心拍などの異常がみられないことを、安定するまで行います。
すぐにでも連れて帰りたいお気持ちはわかりますが、入院して安静にしてあげるとともに、傷口や猫の様子が安定するまで獣医師のしっかり確認してもらう方がいいでしょう。
ただ、ストレスを感じやすい猫や神経質な猫は慣れない入院によって食欲低下、おしっこを我慢してしまう、ずっと鳴き続ける、凶暴化するといった強いストレス行動がみられることがありますので、その場合には獣医師が判断し早めに退院することもあります。

抜糸の時期

避妊手術では子宮と卵巣の摘出後、お腹の「腹膜」と「筋層」の縫合を行い、最後に皮膚の縫合を行います。
動物病院の方針によりますが、避妊手術後に抜糸が必要な場合と必要ない場合があります。
必ず退院時に獣医師に確認してください。

猫の避妊手術の抜糸までの期間や費用は?自分でしてもいいの?

抜糸が必要ない場合

避妊手術において、よく行われる皮膚の縫合法は「皮内縫合」です。
皮膚などの組織に吸収されて溶ける糸(吸収糸)を使用し、皮膚の内側で縫合するため、糸が皮膚の外に出ません。
時間の経過とともに吸収されるので抜糸の必要はありませんが、傷口が安定するまでは猫が舐めたりしないように保護が必要です。

抜糸が必要な場合

一般的に、術後1週間~10日後に傷口の状態を確認して抜糸を行います。
皮膚の表面に出ている糸を切り、引っ張って抜くという処置で、猫がおとなしくしていれば数分で終わります。
この時、糸が皮膚に食い込んでいたり、癒着していなければ、猫は痛みを感じることはありません。
早めに抜糸を行うと、皮膚の付き具合(癒合(ゆごう))が不安定であるために、傷口が開いてしまうことがあります。
お腹の腹膜、筋層がきちんと縫合されていれば、内臓が飛び出てしまうということはありませんが、皮膚の傷口辺縁を少し切開して縫合し直さなければならないこともあります。
抜糸が遅れると、縫合糸に皮膚組織が反応して盛り上がり、糸が食い込んだ状態になることがあります。
食い込んだ糸を抜き取るためには、強く引っ張ったり、ほじったりしなくてはならないため、皮膚を傷つけて腫れや出血、かゆみが生じることがあります。

退院後の心配ごと① 猫の様子

退院後の猫の様子がいつもと少しでも違うと、避妊手術の影響ではないかと心配になりますよね。
まずは、退院後によくみられる猫の様子についてご説明しましょう。

ぐったりして食欲がない

退院したばかりの猫がぐったりと元気がなく、食欲がないというのはよくあることです。
慣れない入院生活や手術によって、かなりの体力を消耗していますし、精神的にも疲れています。
他の入院動物の存在が気になって入院中は十分な睡眠がとれなかった猫も多く、帰宅してようやくリラックスできて、1日中寝ているということもあります。
無理に食べさせる必要はありませんが、少しでも食べられるように、猫の好きなウェットフードなどを与えてもいいでしょう。

下痢、嘔吐

入院、手術による体力的、精神的なストレスは、下痢や嘔吐の様な消化器症状としてあらわれることがあります。
通常、安心できる自宅で安静にしていれば落ち着きますが、数日続くようであれば動物病院に相談しましょう。
また、退院後に処方された抗生物質などの内服薬が体質に合わずにすぐに吐き出したり、軟便をすることもあります。

ウンチをしない

退院後、すぐに排便がみられないことはよくあります。
手術前後の絶食や食欲の低下で便が少なくなっていること、緊張状態が続いていて落ち着いて排便できないということが考えられます。
基本的には、時間の経過とともに解決しますので、ストレスのかからないようにゆったりと過ごさせてあげてください。

血尿が出た

猫が血尿をした場合、「もしかして手術の失敗かな…」と心配になるかもしれません。
猫は慣れない動物病院での入院で過度の緊張状態や、いつもと違うトイレに戸惑って、なかなか排尿しないことがよくあります。
このようなストレスや膀胱に尿が溜まった状態が続くことで、膀胱炎となり、血尿が出ることがあります。
血尿以外にも頻尿、陰部を気にするなどの膀胱炎の症状が数日続く場合には、動物病院に相談しましょう。

退院後の心配ごと② 傷口の様子

猫のお腹の手術の傷口の状態は、どうしても気になってしまうかと思います。
退院後に心配になる傷口の様子についてご説明します。

傷口を舐めてしまう

猫の体は非常に柔らかいので、頭以外の場所はよく舐めます。
猫のザラザラした舌で舐め続けることで、治りかけた傷口が開いたり、周囲の皮膚が傷ついて細菌感染してしまうことがあります。
もし、皮膚が傷ついていたり、多量の出血がみられる場合には、念のため獣医師に相談しましょう。

エリザベスカラー

傷口を物理的に舐められないようにするために、猫の首にエリザベスカラーを装着して退院することも多いでしょう。
はじめは猫が嫌がったり、あちこちにぶつかったりして不便そうにしていても、だんだんと慣れてしまうことが多いので、退院後に自己判断で外してしまうのはやめましょう。
ごはんが食べづらそうなときには、台の上に食器を置くなどして少し高くしてあげるといいでしょう。

服、術後服

動物病院によっては、お腹の傷を保護するために、足を通し穴が付いた術後服を猫に着せることがあります。
服を着ることに慣れていない猫は、なんとかして脱ごうとしたり、じっと動かなくなることもあります。
歩き方がおかしいなと気付いた時は、足の付け根の部分に窮屈さを感じているかもしれません。
もし、きつそうであれば足の付け根部分の穴を広げてもらえるか獣医師に相談してみましょう。
あまりゆるくなりすぎると、体が柔らかい猫は簡単に脱いでしまうことも多いので注意してくださいね。

傷口が腫れている

お腹を切開して皮下組織や脂肪などに触れているため炎症を起こして、傷口の周辺がぽこっと腫れることがあります。
激しい出血や、痛みなどがないのであれば、時間とともに腫れは引いてきます。
ただ、猫が舐めたり、飼い主さんが気になって何度も触ってしまったりすると、炎症が治まらずに腫れが引きませんのでご注意ください。

縫合糸が取れた

猫が舐めたりして、皮膚を縫合した糸が取れてしまった場合、「お腹の中身が出てきてしまうのでは?」と不安になるかもしれませんが、皮膚の糸が外れているだけであれば、さらに内側の腹膜や筋層は縫合されているので、腹腔内があらわになるということはありません。
ただし万が一、腹膜や筋層などを縫合した糸がなんらかの要因で外れている場合には、腸や脂肪などが飛び出てくる恐れもあります。
いずれにしても糸が外れている場合には、すぐに動物病院に相談しましょう。

お腹の毛は生えてくる?

避妊手術を受ける時には、被毛に付着した細菌の感染を防ぐため、また手術中に術野をきちんと見やすくするためにお腹の毛を全体的に広く剃ります。
麻酔薬や点滴を入れるための静脈を確保するため、前足の毛を少し剃るケースもあります。
「女の子(猫)なのに、ハゲたままだったらどうしよう」と心配される方もいらっしゃいますが、毛は徐々に生え変わりますので、早ければ術後1ヶ月ほどで元通りに生えそろう猫がほとんどです。
皮膚病があったり、高齢で毛の生え変わり周期(ターンオーバー)がうまく働いていない場合は、数か月かかったり、まだらに生えるということもまれにあります。

手術の傷跡は残る?

避妊手術では、子宮の位置に近いお腹の真ん中より少し下あたりを切開します。
切開の長さは、猫の体格や獣医師にもよりますが、2~3cmほどでしょう。
しっかりと傷がくっついて、お腹の毛が生えそろえば、よく見ないとわからないくらい目立ちません。
猫の避妊手術の場合、吸収される糸を使った皮内縫合と通常の糸を使った縫合のどちらかが行われますが、一般的には皮内縫合の方が傷跡が目立ちにくいでしょう。
だからと言って、獣医師に「絶対に皮内縫合でやってください!」とリクエストしても、確約できないこともありますのでご注意ください。
猫の体格や健康状態、獣医師の方針などによって縫合方法は異なります。
子宮や卵巣の異常などが見つかったり、予期せぬ出血によって傷口は大きくなることがあり、その場合には傷口の癒合の安全性を優先して通常の縫合を選択することもあるためです。

傷口の大きさについて

傷口の大きさは基本的には2~3cmと言いましたが、実は執刀する獣医師によって様々で、小さい傷の場合、1cmほどの場合もあります。
1cmほどの切開ではお腹の中に指を入れて処置することもできないのに、なぜこんなに小さくできるのかというと、「子宮つり出し鈎(こう)」という手術器具を用いるためです。
猫の子宮は“Yの字”になった細長い管状で3~6mmほどで、左右の先端にそれぞれ卵巣があります。
また、子宮つり出し鈎はステンレス製の細い棒で、先端が“Jの字”状に曲がっています。
この器具を切開した部位から腹腔内に入れて、子宮に引っ掛け、外につり出します。
結紮する血管や組織を見えるように子宮を引っ張り、摘出していくというわけです。
傷口が小さいため、猫が傷口を気にしない、傷跡が小さくなるなどのメリットがありますが、腹腔内の状態を十分に目視することができないため、出血や内臓の異常などを見逃してしまう可能性があるというデメリットもあります。
5~6cmほどの傷口になるケースは、猫の腹腔内をしっかりと確認しながら行うことができる、血管の結紮などの作業の効率が良いとうメリットがあります。
大きな傷口になることで、猫の痛みも増すのではないかと思われがちですが、それほど大きな違いはないと考えられています。
きちんと皮膚を縫合していれば、傷が治るまでの時間も1週間から10日ほどで変わりません。
気になる方は、獣医師に確認してみましょう。

猫の避妊手術後の変化

避妊手術を受けたメス猫には、どのような変化がgみられるのでしょうか。

性格の変化

避妊手術の前後で、性格が大きく変わるということはないと思いますが、中には穏やかになったり、甘えるようになる猫もいるようです。

穏やかになる

発情に伴う体へのストレスは大きく、食欲が落ちたり、人を寄せ付けないようになったり、物陰に隠れている、イライラしているというような行動を示すことがあります。
避妊手術によって、性ホルモンの影響が減り、発情に関するストレスがなくなりますので、術前よりも安定してリラックスできるようになります。
このため、以前より穏やかになった、おとなしくなったと感じる飼い主さんも多いのだと思います。

甘えるようになる

避妊手術によって発情がなくなると、意識がオス猫から身近な飼い主さんに向くようになります。
以前はツンとすましていた猫が、術後は飼い主さんに近寄ってくるようになったり、膝に乗ってくるようになったという話も時々聞きます。

身体の変化

太りやすくなる

避妊手術後は、発情に関するストレスがなくなり、オス猫を探し求める行動もなくなることから、食欲が増すようになります。
また、発情行動で活発に歩き回ったりすることも減るため、運動量が減り太りやすい状態になります。
肥満になると、糖尿病や関節への負担などの病気のリスクが高まりますので、飼い主さんがしっかりと管理して防いであげてください。
術前と同じ量を食べていると、太ってしまうことが多いので、術後は食事量や運動量に気をつけましょう。

行動の変化

発情行動がなくなる

繰り返しになりますが、発情期にみられていた行動がなくなります。
大きな声で鳴く、ゴロゴロと転げまわる、外に出たがるといった行動もほとんどの場合みられなくなりますが、手術前に何度か発情を経験していると、癖となって残ることもあります。

避妊手術したのに発情行動がみられる?

避妊手術後に発情が起こることは滅多にありませんが、生き物相手の手術ですので可能性として「絶対にない」とは言い切れません。
猫の腹腔内に卵巣の機能を示す組織がある「卵巣遺残症候群」として知られています。
では、どのような理由が考えられるのでしょうか。

卵巣の一部の取り残し

猫では犬に比べて卵巣の辺縁が明瞭であるため、それほど多くはないものの避妊手術の際に卵巣組織を取り残したり、組織片を腹腔内に落としてしまう例が最も考えられます。
猫によっては卵巣周囲の脂肪や組織が多く卵巣組織の境目がわかりづらかったり、卵巣に付着している靭帯部を切り離す際に取り残してしまう可能性があり、たとえわずかな卵巣組織であったとしても再生されます。
避妊手術をしてから数か月から数年ほど経過してから発情の兆候が見られることが多く、これは残された卵巣組織に血管が新たに作られ、機能的になるまで期間がかかるためで得ると考えられています。

副卵巣がある

まれに通常卵巣がある部位以外に卵巣と同じような組織をもつ「副卵巣」が存在していることがあります。
全ての猫に副卵巣があるわけではなく、また体内のどこに存在するのかも定まっていません。
避妊手術前は機能していなくても、術後に失った卵巣の代わりとして機能し始めることがあります。
基本的には肉眼で探して発見できることはできないため、術前に副卵巣の存在の有無を知ることはできません。
避妊手術後の発情兆候が見られた場合に初めて、副卵巣の存在が疑われることがほとんどです。

どう対応したらいいの?

遺残した卵巣を確認するために、超音波検査を行うこともありますが、発情の周期によっては確認できません。
確定診断のためには、血中の性ホルモンの測定を行います。
治療としては、原因となっている卵巣の残骸や副卵巣、卵巣のような働きをする組織を、再手術により摘出するしかありません。
しかし簡単に見つけることが難しいケースが多いため、再手術を行うか、その時期や方法については、獣医師と相談しながら慎重に判断する必要があります。

さいごに

いかがでしたでしょうか。
猫の避妊手術は一般的になっているとはいえ、いざ手術をしてみて初めて感じる不安や疑問があるかと思います。
まずは手術と入院で疲れた猫をゆったりと過ごさせてあげるためにも、飼い主さんも心配し過ぎずにゆったりと構え、自宅の環境を整えてあげてくださいね。

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