寄生虫症

猫のトキソプラズマの症状や原因や治療方法は?予防はどうしたらいいの?

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猫のトキソプラズマ症、もしかしたら猫を飼っていない方でも、妊婦さんやお子様をお持ちの方は聞いたことがあるかもしれません。
猫では感染しても大きな症状を発症せずに経過をしてしまうことがほとんどですが、猫から人間に感染すると、流産を起こしたり、新生児に影響を与えたりすることがあります。
これだけを聞くと、猫と一緒に暮らすのが怖くなるかもしれませんが、猫から人間に感染して流産を引き起こすのは、ごく限られた場合ですし、正しい知識を持って接すれば、心配する事など決してありません。
妊娠をお考えの方や妊娠中の方で、特に猫を飼っている場合はとても気になると思います。
そんな疑問を詳しく解説していきたいと思います。

猫のトキソプラズマ症とは?

トキソプラズマ症というのはToxoplasma gondii(トキソプラズマ)という原虫(げんちゅう)が引き起こす全身感染症のことです。
猫の感染症として重要というより、むしろ猫から人間へと伝播する感染症という公衆衛生上での重要性が強く、人間の方面から問題とされることが多い感染症です。
特に、妊娠を予定している女性や妊婦さんと、その胎児へ与える問題という点から、通常の人獣共通感染症よりもかなり取り扱いに注意が必要な感染症です。

トキソプラズマ原虫とは

哺乳類や鳥類に広く感染する「原虫」とよばれる原始的な寄生虫の一種で、ほぼすべての哺乳類や鳥類に感染し、主に筋肉の中に寄生します。
非常に小さく、肉眼では見ることはできません。
ネコ科動物が感染した場合にのみ、便の中にトキソプラズマの虫体が排出され、非常に抵抗力が強く、土や水の中でも数ヶ月間にわたって生き続けます。
したがって、感染した猫の便に汚染された土や水も感染源となります。
猫の便から排出されたオーシストはすぐには感染能力を持っていません。
外界でさらに2~3日かけて成長し、初めて感染能力を獲得します。

トキソプラズマ原虫のライフサイクル

腸管型オーシストによる感染経路

トキソプラズマは環境への強い抵抗性を持つ「オーシスト」という卵のようなものとしてネコ科動物の糞便中に排泄されます。
1日程度でオーシストの中で「スポロゾイト」という形態に変化し、他の動物への感染力を獲得します。
このスポロゾイトはオーシストの中に潜みながら数か月以上、感染能力を保ち続けます。
他の動物に感染すると、トキソプラズマは体内で急激に増殖して「タキゾイト(オーシストの中の虫が卵から出て発育したもの)」に変化して数を増やします。
その後、宿主の免疫により増殖が抑えられ、ゆっくりと増殖する「ブラディゾイト」に変化して、脳や筋肉などで多数の「シスト(タキゾイトが集まって塊を形成したもの)」を形成して潜伏します。
そして、次の感染のチャンスを待ちます。
猫とその他の動物での違いは、感染力のあるトキソプラズマのオーシストを糞便中に排泄するかどうか、繁殖するかどうかです。
自然界では、トキソプラズマを繁殖してオーシストをつくれるのは終宿主のネコ科の動物だけです。

トキソプラズマの組織シストから感染する経路

筋肉など内臓の中に潜むトキソプラズマの組織シストに汚染された生肉などをたべることにより、感染します。

トキソプラズマの症状

子猫の場合

発熱、呼吸困難、嘔吐、粘血便、黄疸など様々な症状が現れ、ほとんどの場合死亡します(急性トキソプラズマ症)。

成猫の場合

多くの場合は無症状で経過します。
発症があった場合には、数日間の発熱やリンパ節の脹れ、下痢を起こす程度のことがほとんどで、感染に気付かないまま回復してしまうことの方が多いです。
しかし、免疫力の低下した成猫では、眼内に生じるブドウ膜炎(虹彩や、眼球をおおう脈絡幕の炎症)や、発熱、体重減少、元気・食欲低下、てんかん様発作や運動失調、体の一部が麻痺するなどの神経症状、膵炎、下痢などの消化器症状、黄疸など、多岐にわたります。(慢性トキソプラズマ症)。

トキソプラズマの検査方法

便の検査

糞便中のオーシストを見つけることでトキソプラズマ感染を疑うことができます。
もし、トキソプラズマのオーシストが発見されたら妊婦の方にとって非常に危険な状況と言えます。
しかし、オーシストが便中に排泄されるのは、感染初期のごく限られた期間だけですので、この検査で見つかることは比較的まれです。
また、オーシストは近縁のコクシジウム類との外見上の区別が困難であり、目視による顕微鏡検査ではトキソプラズマ症を確定することは難しいでしょう。

抗体測定

血液検査による抗体測定を行います。
抗体とは、侵入してきた病原体に対してつくられるタンパクです。
しかし、この抗体は感染してすぐに作られるのではなく、しばらくかかります。
そのため、一定の期間を開けて2回検査を行い判定します。

2回とも陽性反応が出た場合

過去に感染したことがあり、既にその猫は免疫を持っていることから、オーシストの再排泄の可能性はほとんどありません。
人間を含め、他への感染源となる可能性は低くなります。

2回とも陽性で抗体価が低値から高値になった場合

現在進行中の感染の可能性があります。
オーシスト検出の可能性が高く、要注意の状態です。

陰性から陽性になった場合(陽転:ようてん)

感染の急性期の可能性があります。
オーシスト、タキゾイト、シストのどの段階で感染したかによりオーシスト排泄の開始時期が異なるため、必ずしも検出できるとは限りません。
オーシストで感染したときは排泄がみられないことがあります。
このタイプも隔離が必要です。

2回とも陰性の場合

トキソプラズマに感染した経験がまったくなく安全と判断します。
ただし、今後トキソプラズマに感染すれば便中にオーシストを排泄する可能性があるので、予防を徹底し、感染の可能性を絶対に排除してください。

PCR検査

抗体検査が陽性で、トキソプラズマ症の疑いがある猫には、眼の中の眼房水をもちいた遺伝子増幅によるPCR法によって、高い精度でわずかなトキソプラズマの遺伝子を検出して病原体が存在するという診断を行うことができます。
このPCR法は糞便でも可能で、従来の顕微鏡による糞便検査とは比較にならない精度でトキソプラズマの有無を明らかにできるため、便検査でオーシストがみられない場合や、発見されたオーシストがトキソプラズマかどうかを診断するのに非常に有効です。

トキソプラズマの治療方法

クリンダマイシンやドキシサイクリンなどの抗生物質や、トリメトプリム・サルファ剤などの抗菌薬を使用します。
残念ながら、猫の体からトキソプラズマを完全に取り除いたり、オーシストの排泄を完全に抑え込む抗トキソプラズマ薬はありません。
治療後は免疫ができるため、再発症することはありませんが、トキソプラズマ原虫は生涯にわたって潜伏し続けると言われています。

トキソプラズマは人間にも感染するのか

トキソプラズマは猫だけでなくほとんどすべての哺乳類、鳥類に感染します。
もちろん人間も含まれます。
日本でも、成人の5~40%が抗体陽性反応を示すほどありふれた感染症です。
健康な人が感染してもほとんど何の症状も示さないため、通常は問題視されることもありません。
問題になるのは妊娠を考えている場合やすでに妊娠している女性です。
感染経路としては大きく分けて2つに分けられます。

人間への感染経路

生肉を食べた場合

トキソプラズマはネコ科以外の動物に感染した場合、動物の体内から出てくることはありません。
ですから、ネコ科以外の動物からトキソプラズマが人間にうつるのは感染した動物の肉(筋肉だけでなく脳などの臓器も含む)を生で食べた場合に限られます。

糞便中のトキソプラズマのオーシストを経口摂取した場合

ネコ科動物が感染した場合、糞の中にトキソプラズマの虫体が排出されます。
この虫体はオーシストとよばれる非常に丈夫な構造をしており、一般的な消毒薬で殺すことができません。
そればかりか土や水の中に紛れ込んで数ヶ月間にわたって生き続けます。
したがって感染した猫の糞に汚染された土や水も感染源となります。

トキソプラズマに感染した人間の症状

健康な人間であればほとんど症状が出ることはありません。
免疫が低下している場合には、脳炎や肺炎などを起こすことがあります。
妊婦がトキソプラズマに感染した場合に、胎盤を通じて胎児に感染して流産や先天性トキソプラズマ症などの重大な障害を起こす可能性があります。
母体への感染が妊娠初期であれば胎児への影響は強く、重症となります。
妊娠6ヶ月以降に母体が感染した場合には、胎児への影響はほぼないといわれています。

人間のトキソプラズマ症の新トピック

少し前までは、感染しても妊婦でなければさほど問題はないとされていました。
しかし、近年の研究で、トキソプラズマ症は人の気分や性格を変えてしまう可能性があるということがわかってきました。
統合失調症とのかかわりも指摘されています。
統合失調症の人はドーパミン値が高くなるのですが、トキソプラズマの侵入した脳の神経細胞は三倍以上も多くドーパミンを生産しており、脳内にたまっていることが発見されました。
今はまだ広く知られているトピックではありませんし、この研究にどれほど真実性があるかはまだわかっていません。
研究が進めばもっと明らかになることがあるかもしれません。

トキソプラズマ感染症の予防方法

「環境中のオーシストの摂取を防ぐ」、生の肉類に含まれる「トキソプラズマの組織シストの摂取を防ぐ」ことが大切です。

オーシストの摂取を防ぐ

・生肉や、充分火の通っていない肉を猫に与えない。
・小動物などトキソプラズマの宿主を遠ざけ、猫に狩りをさせない。
・猫のトイレは毎日掃除し清潔にして、糞は残さず洗い流す。
・猫のトイレは定期的に熱湯で洗浄・消毒する。
・ガーデニングや家庭菜園の際には手袋をつけ、その後はよく手を洗う。
・土のついた生野菜の摂取を避けるか、よく洗ってから食べる。
・子供が遊ぶ砂場や庭に屋外の猫を入れない、排泄させないようにする。
・湧き水・井戸水などの生水を食品に付着させない。

組織シストの摂取を防ぐ

・生肉、肉製品は66度以上の温度で調理したものを食べる。
・生肉を扱うときは手袋をつけるか、調理後はよく手を洗う。
・生肉を扱った調理器具、食器はそのまま使用しない。
・生肉は、肉製品は調理前に3日間以上凍結する。

さいごに

トキソプラズマは、人間への感染がクローズアップされがちですが、危険なのは、飼い主が妊娠時に猫が初感染した場合に限られます。
母子感染の危険がある子猫を飼い始めたり、野良猫と接触したりしないように注意しましょう。
実際に、人間への感染は、猫からよりも、加熱されていない生肉を食べたり、土や生水からの感染の方がはるかに高いと言われています。
このトキソプラズマ症は、猫では特異的な症状がなく、いつの間にか症状が治まってしまうことも多いため、動物病院でトキソプラズマ症と診断されることは実は非常にまれです。
検査をして「陽性」であってもいつのまに感染していたのかわからないことも良くあります。
つまり、獣医師にとってはあまりタイムリーに遭遇する病気ではないのです。
妊娠を考えていたり、妊婦さんはこのことを踏まえて自分でもしっかりと勉強することが大切です。
トキソプラズマ症は、血液検査の結果が陰性だから大丈夫、陽性だから危険という単純な解釈ではありません。
陽性だからといって猫を処分したりするのは大きな勘違いですので、検査結果の解釈を、落ち着いて獣医師と相談してくださいね。





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