猫がおしりをしきりに舐めて気にしていて、なんだろうと見てみたら、肛門の脇の皮膚に穴がぱっくり開いていて、びっくりすることがあります。
そうです、それが肛門腺の破裂です。
すべての猫に肛門腺はありますが、その肛門腺が破裂するのはどのような時なのでしょうか?
どのような治療があるのでしょうか?
再発を防止するための予防方法なども解説していきます。
目次
肛門腺とは
肛門を時計の針の中心とすると、4時と8時の方向に肛門嚢(こうもんのう)とよばれる袋が2つあります。
肛門嚢には肛門腺(こうもんせん)で生成された分泌液が蓄えられています。
通常は、袋の底に肛門括約筋がつながっていて、排便時に肛門をキュッと締めると袋が圧迫されて、分泌物が出てくる仕組みになっています。
怯えたり驚いたり、ストレスを感じると大量の肛門腺を一度に放出することもあります。
分泌物は、アポクリン腺と皮脂腺から成っており、非常に臭いが強く、ドロッとした粘土状のものからサラサラした液状のもの、色もさまざまで、黄色っぽいものから茶色や灰色、黒など猫によって違いがあります。
分泌物の匂いは個体ごとに違うので、マーキングや、お互いに臭いを嗅ぎ合うことで、猫同士のコミュニケーションにも使われます。
肛門嚢が破裂するのは、肛門嚢炎や分泌不全によっておこります。
肛門嚢炎とは
猫の肛門嚢炎とは、肛門嚢に炎症が発生した状態を言います。
犬よりも猫での発生はまれと言われていますが、動物病院では猫の肛門嚢炎は比較的よく遭遇する病気です。
肛門嚢炎の発生機序
何らかの理由で分泌液が肛門嚢の中にとどまり、そのまま放出されない状態が続くと、滞留した分泌液の中で細菌が繁殖します。
体は異物を取り除こうと、免疫が活性化して炎症が起こります。
これが肛門嚢炎です。
さらに進行すると、肛門嚢の中で作り出された膿がどんどんたまり、膿瘍(のうよう)とよばれるコブのような膨らみに成長することもあります。
放置してしまうと、破裂の可能性があるため大変危険です。
しかし、なかなか肛門嚢の内部で炎症が起きている段階で異常に気付くことは難しく、破裂してから気付いて来院されることがほとんどです。
もし、炎症の時点で気付くことができるとしたら、お尻を気にして舐めていたり、床にこすり付けているという非常に些細な症状の段階で、なにかおかしいなと違和感を感じた場合です。
相当注意深く猫を観察している証拠です。
肛門嚢炎の原因
肛門嚢の出口の詰まり
肛門嚢は通常、便をする時に、外肛門括約筋によってキュッと押しつぶされ、中の分泌液を肛門内に放出します。
しかし肛門嚢と肛門とをつなぐ管(肛門嚢管)に目詰まりがあると、分泌液の正常な排出が滞り、肛門嚢の中に溜まったままになってしまいます。
定期的な肛門腺絞りをしていない場合
自然に分泌物を排泄できている猫は問題になることはありませんが、自力で排出できない猫でも、定期的に肛門腺を絞れば、分泌物が溜まることはなく、炎症に発展することはありません。
不適切な肛門嚢絞り
肛門腺絞りを定期的に行うことはとても重要なのですが、うまく排泄させることができず、逆にぎゅうぎゅうと押してしまう事で炎症を引き起こしてしまうこともあります。
よほどの肥満や大型の猫、分泌物が固いとかでなければ正しい方法で絞る場合は、力は全く必要ありません。
出ないからと力づくで押すのはやめましょう。
運動不足
日頃の運動量が不足していると、骨盤周辺の筋力が低下して効率的に肛門嚢を絞れなくなることがあります。
外で狩りをしていた頃に比べると、室内での生活は穏やかなため、興奮時に勢いあまって排出をすることが少なくなったことなども要因の一つではないかと考えられています。
肥満
運動不足を誘発している肥満も、原因の一つです。
加齢による筋力の低下
加齢で筋力が低下すると肛門腺は溜まりやすくなります。
若い頃は、自力で排泄できていた猫でも、年齢とともに出せなくなることがありますので、うちの子は大丈夫と過信するのは禁物です。
慢性的な軟便や下痢
慢性的に軟便や下痢などをしていると、排便時にいきまないため、肛門腺が排出されず溜まっていってしまうことがあります。
肛門腺分泌量が多い場合
排泄量以上に分泌量が多ければ、自然と溜まってしまいます。
肛門嚢炎の症状
炎症の初期は肛門周辺に腫れ(膿瘍の状態)や赤みが起こります。
進行とともに皮膚の色は赤紫色→濃紫色と変化していき、最終的に壊死します。
お尻を気にしてしきりに舐めたり、お尻をこするように歩きます。
舐めることによってお尻の周りに脱毛がみられることがあります。
いきむと痛みがあるため、便が出にくく、鳴きわめいたり、突然走り出したりします。
痛みや違和感から元気がなくなり、食欲がなくなる猫もいます。
全身疾患に波及することはまれです。
破裂した部位からは膿が分泌されたり、出血が起こる場合もあります。
傷口は大きく、皮膚の下の赤々とした筋肉が露出しますので、お尻を噛まれたと勘違いをして動物病院に来る飼い主さんもいます。
肛門嚢炎の治療方法
消毒、抗生物質
肛門嚢炎が進行して破裂している場合は、破裂した部位の皮膚が壊死していることがありますので、皮膚の再生を促すために壊死した皮膚は取り除きます(デブリードメント)。
消毒や抗生物質などを投与して化膿を抑えます。
ほとんどの場合、全身治療の必要はなく、局所治療で治療が可能です。
壊死した部位は痛みを感じないため通常麻酔は必要ありません。
まだ破裂していない場合は、鼻涙カニューレや猫用の細いカテーテルを用いて、肛門嚢内に直接抗生物質や抗炎症薬を注入します。
しかし、閉鎖された空間の細菌感染をコントロールすることは時間もかかり、困難で、場合によっては医原的に切開して、排膿させ、消毒や薬を塗る場合もあります。
皮膚が再生して自然に穴がふさがるのを待つため、最初の2.3日は連続で、その後は2.3日ごとに傷をチェックして適切な治療を行います。
肛門周囲は血流豊富なため、初期の病変が巨大に見えてもあっという間に治っていきます。
あまりに消毒しすぎると、再生しようとする細胞まで除去してしまう可能性がありますので見極めが大切です。
レーザー照射
組織血流の増加、治癒促進を目的に使用することがあります。
エリザベスカラー装着
場所がら、包帯やテープで保護することができないので、なめてしまわないようにエリザベスカラーを装着します。
外科療法
この病気は再発率が高い病気で、投薬治療が効かない場合や、何度も再発する場合は、肛門嚢自体を手術で切除します。
肛門嚢炎の予防方法
猫の肛門は、普段尻尾で隠れているので、異常を早期に発見するのが非常に難しいといわれています。
意識して、定期的に猫の肛門付近をチェックすることが重要です。
肛門腺絞り
肛門嚢にたまった分泌液を肛門腺絞りによって排出します。
肛門の下4時と8時の位置を指で挟み、ギュッと押しつぶすように絞り上げます。
分泌液が勢いよく飛び出すことがありますので注意してください。
目安としては月に1回程度です。
もちろん、自力で排泄している猫の場合は全く溜まっていない場合もあります。
生活習慣の改善
肥満により運動量が低下したり、肛門周りのグルーミングができなくなると、発症しやすくなります。
肥満は万病の元といわれているので、適度の運動と正しい食事で、適正体重を維持できるようにしましょう。
猫の筋力が低下しないように、遊びを取り入れ、適度な運動をしていれば、筋肉の収縮によって肛門嚢に圧迫が加わり、中の分泌液は自然に肛門内に排出されるようになります。
病院に連れていくタイミングは?救急疾患?
破裂した直後はとてもグロテスクな傷口ですし、出血をしたりしていることもあるので、見つけた途端にびっくりしてしまう飼い主さんが多いです。
よく見ようとしてしっぽを触ろうとすると猫は怒るので、よく確認もできず、夜間救急でも慌てて来院される方もいるくらいです。
しかし、肛門腺破裂は見た目ほど重症の病気ではありません。
自宅にエリザベスカラーがあれば、装着して舐めないようにした状態で、翌日動物病院を受診すれば大丈夫です。
完治するまでは膿や出血などの廃液でベットやソファーが汚れてしまうので、ある程度対策をしたほうが良いでしょう。
さいごに
炎症を起こして破裂した肛門腺は、実際空いている穴より、奥ではもっと大きく化膿しています。
治療を開始すると、表面の壊死した組織を除去したりするため、一時的に傷口が大きくなります。
不安になってしまうかもしれませんが、この壊死した組織を除去しなければ、傷口はふさがってきませんので、安心してください。
何度も再発する場合は、肛門嚢自体を摘出する手術はありますが、やはり手術は麻酔など負担がかかりますので、できるだけ再発しないように積極的に予防を行うことが重要です。
「動物病院に連れていきたいけど治療費はどのくらいかかるんだろう?」
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