泌尿器の症状

猫の慢性腎不全の末期症状とは?余命はどのくらいなの?

投稿日:2017年10月21日 更新日:

 

「猫が腎不全末期と診断された。治療はできる?」

「猫の慢性腎不全の末期には、どんな症状が出るの?」

「末期になると、余命はどのくらいだろう?」

このようなことでお悩みではないでしょうか。
猫の慢性腎不全は高齢の猫に多い病気ですので、ご長寿猫が増えた近年では非常に多い病気です。
そこで今回は、残念ながら腎不全末期と診断された場合に気になる症状や治療、余命について解説します。

慢性腎不全の末期とは?

猫の慢性腎不全は、徐々に進行して腎臓の機能が低下する病気です。
慢性腎不全は気付かないうちに腎臓がダメージを受け、治療をしても腎臓の組織ならびに機能は元に戻ることはありません。
腎臓のダメージが75%以上になって初めて多飲多尿、食欲不振、嘔吐などのわかりやすい症状があらわれ、90%以上のダメージを腎臓が受けると体内に毒素が溜まる「尿毒症」となり危険な状態に陥りやすくなります。

猫の慢性腎不全の初期症状とは?悪化させないためにはどうしたらいい?

猫の腎不全をステージ1~4に分類している「IRIS分類」では、腎機能が10%以下になった状態をステージ4とし、重度の腎不全(末期)であるとしています。

血液検査の数値

血液検査で腎臓の機能を示す項目として、主にBUN(尿素窒素)とCre(クレアチニン)が注目されます。
BUNはタンパク質を分解した時に出る老廃物、クレアチニンは筋肉を動かすアミノ酸の老廃物で正常であれば腎臓のろ過機能によって体外に排泄されます。
どちらも腎機能の75%以上が失われると血液検査上、数値が上昇します。
いつから「末期」と呼ぶのかは臨床症状や猫の状態にもよりますが、IRIS分類では血中クレアチニン濃度が5㎎/dl以上をステージ4としています。

猫が腎不全に?クレアチニンとBUNの数値は何を表してるの?

末期症状は?

では、末期にはどのような症状があらわれるのでしょうか。

尿毒症

腎臓の機能が著しく低下すると、血液検査上でBUNが上昇します。
この状態を「高窒素血症」ならびに「腎不全」と言いますが、さらに臨床症状を示す場合「尿毒症」と言います。
本来なら尿中に排泄される有害な物質が体内に溜まってしまうため、体に様々な影響を及ぼします。
尿毒症は慢性腎不全以外にも、急性腎不全や腎炎、尿路症候群などで腎臓のダメージが大きい場合にもみられます。

症状

特徴的な口臭(アンモニア臭)、食欲の減退、繰り返す嘔吐、下痢、脱水などがみられます。
体温が下がり、痙攣を起こすこともあり、ひどくなると昏睡状態に陥り死に至ります。

猫の尿毒症の症状や原因、治療法とは?末期症状や余命も解説

慢性腎不全による貧血

赤血球は骨髄で産生され、一定期間が経過すると脾臓などで破壊されます。
健康な猫では、赤血球の産生量と破壊・消失量のバランスを保って赤血球数が正常範囲内に維持されていますが、なんらかの原因によって赤血球の産生量が低下した場合や、破壊・消失量が増加した場合には貧血となります。
骨髄での赤血球産生を促進する「エリスロポエチン」というホルモンは、腎臓で産生されています。
慢性腎不全になると、このホルモンの生成が低下するため、赤血球産生が減少し、貧血となります。
歯肉や眼瞼の結膜などの可視粘膜が蒼白となり、元気や食欲が低下します。
また、呼吸が早くなったり頻脈がみられることもあります。

乏尿、無尿

最終的に腎臓で尿を作り出すことができなくなる「乏尿」あるいは「無尿」状態になると、数日以内に命を落とすケースがほとんどです。

どんな治療をするの?

腎臓は一度ダメージを受けて機能を失うと組織が再生することはないため、残った正常な腎臓組織の負担をできるだけ減らして、腎機能を保つという治療しかできません。
慢性腎不全の末期症状があらわれた場合には、腎臓そのもののダメージが非常に大きいため、腎臓に対する根本治療は不可能で、それぞれの症状に対する対症療法が中心となります。

水分補給

水分を補給して多量の尿を作ることで、尿毒症の原因となる有毒な物質を体外に排泄するのを促します。
末期で猫の状態が悪い場合には、入院の上、静脈点滴で体内の水分を補給します。
通院または自宅で看護する場合には、皮下輸液と言って静脈(血管)ではなく主に背中の皮膚の下にラクダのように水分を入れて、その後ゆっくり体内に浸透させる方法をとることもあります。

消化器の薬

嘔吐や胃炎に対して、H2ブロッカーなどの制吐薬や胃粘膜保護剤を投与することもあります。

血圧を下げる薬

腎不全の猫では、腎臓の糸球体という部位の血圧が高いことが多いため、尿中にタンパクが漏れ出てしまうことがあります。
このため、ACE阻害剤やCaチャネル阻害薬などの投与により血管を拡張させて、血液循環を良くさせて血圧を下げます。

吸着剤

食事と一緒に摂取して体内の有害な物質を吸着、便と一緒に排泄させる薬です。
活性炭に似た物質で腸内で窒素を吸着するものや、血中リン濃度が高い場合には、リンを吸着するものを与えることもあります。

貧血の治療

エリスロポエチン製剤の投与や鉄分、葉酸などのサプリメントを与えることもあります。

血液透析、腹膜透析

体内の有害な老廃物を取り除くために、血液透析や腹膜透析などを行うこともあります。
血液透析は血液を一度体外に出して、特殊な膜を通して老廃物を取り除いてから、きれいな血液を再び体内に戻すという治療法です。
腹膜透析は、猫の腹腔に液体を入れて有害な老廃物を滲出させ、その液体を回収するという治療法です。
人間でよく用いられている治療法ですが、どちらも猫の透析を行う施設がまだ少なく、猫ではまれな治療ではあります。
今後対応する動物病院が増え、慢性腎不全の治療に選択肢が増えるかもしれません。

食事はどうしたらいい?

末期の猫にどのような食事を与えるべきか、また、食欲が落ちて食べられない猫に何を与えたらいいのか悩むかと思います。
慢性腎不全の猫にはどのような食事が必要なのでしょうか。

一般的な慢性腎不全の食事

猫の慢性腎不全では、一般的に低タンパク質、低ナトリウム、低リンの食べ物を与える食事療法が推奨されます。
腎臓が処理するタンパク質(窒素化合物)の量を減らすことで、腎臓の負担を軽くすることができます。
しかし、タンパク質は生命の維持のために必要な栄養素でもあります。
特に肉食動物である猫は、タンパク質を摂らないと体力や食欲がますます落ちてしまいます。
タンパク質が不足すると必要なエネルギーは、はじめは蓄えていた炭水化物や脂肪によってまかないますが、それらが尽きると身体は筋肉などのタンパク質をエネルギー源にするようになります。
このため、ある程度のタンパク質の摂取は必要となります。
できる限り、消化吸収がよく、タンパク質の利用効率が良い「生物価」の高い食事を与えましょう。
これらのことに配慮して作られた腎不全用の療法食を利用するのが最適かと思います。

慢性腎不全の猫が食事を食べないけどどうしたらいいの?

自力で食べられなくなったときは

慢性腎不全末期の猫は、食欲がなく自力で食べることが難しいケースが多いでしょう。
前述のとおり、制限した方がいい栄養素のことを考えると何を与えたらいいのか悩んでしまうかと思います。
腎不全用の療法食には、ウェットフードや流動食のようなものもありますので、シリンジ(注射器)やスポイトなどを使って食べさせてあげたり、鼻から食道にチューブを入れて流動食を流し込ませてあげるような介護をしてあげましょう。
頭も持ち上げられないくらいに衰弱している場合や、激しく嫌がって食べない場合には、すでに消化機能も低下して食べ物を受け付けなくなっていることもあります。
無理やり押さえつけてまで与えるよりは、見守ってあげることも必要になるかもしれません。
全く食べないという状態に陥った場合には、何でもいいので猫が好んで食べてくれるものを与えてもいい場合もあります。
猫の状態にもよりますので、獣医師に相談してみましょう。

余命はどのくらい?回復するの?

慢性腎不全は、残念ながら完治する病気ではありません。
末期と診断されると、猫の状態にもよりますが早ければ数日で亡くなることもあります。
尿毒症の治療によって、血液中の有害物質が少なくなると、食欲が戻ったり、元気を取り戻し一時的に体調が回復する場合もあります。
しかし、何度も尿毒症の状態を繰り返すほどに進行すると、徐々に消耗し衰弱していき、長くても数か月から半年ほどでなくなるケースが多いでしょう。

安楽死について

ごはんも食べられず、苦しんでいる猫の看病をしていると、多くの方が一度は“安楽死”という選択がよぎるかと思います。
病気で苦しむ猫の安楽死については、とても難しい問題です。
獣医師にはアドバイスすることはできても、それを促したり、決めることはできません。
最終的には飼い主さん自身が、猫と家族のことを考えて決断しましょう。
個人的な見解ですが、飼い主さんが愛猫のために真剣に考え、たくさん悩んで出した結論は、すべて間違ってはいないような気がします。
猫にとって大切な存在である飼い主さんが選んだ選択なら、猫にもその思いが伝わっているような気がするからです。

さいごに

愛猫が腎不全末期と診断され、だんだんと衰弱していく姿を見るのはとてもつらいことだと思います。
それに加えて、どのような治療を行うか、入院か在宅看護か、どうやって食べさせたらいいのか…様々なことで選択を迫られ、悩むこともあるでしょう。
それぞれ状況や環境が異なるように、治療や看護、看取り方もそれぞれです。
獣医師に相談しながら、愛猫にとって、家族にとって最善な方法を考えられるといいですね。

関連記事になります。合わせてご覧ください。

慢性腎不全の猫の治療を継続する、しないの判断はどうしたらいい?

獣医師解説。猫の慢性腎不全の最期の延命治療や看取り方について

獣医師解説。猫の慢性腎不全の原因や症状や治療とは?回復はするの?





愛猫のために知ってほしいこと


「動物病院に連れていきたいけど治療費はどのくらいかかるんだろう?」

「愛猫の病気を治してあげたいけど高額費用を支払う余裕がない…」

という飼い主さんはとても多いです。

動物病院で治療する場合、病気によっては10万円以上かかってしまう場合もあります。

動物病院で治療すれば助かった命は実に多いです。

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