「猫が突然、赤いおしっこをした…」
「猫が血尿する場合は何が原因なの?」
なんてあなたは思っていませんか?
突然、猫が血尿したら驚きますよね。
実は、猫は砂漠の多いエジプトが原産で元々あまり水分をとらないため、腎臓や膀胱といった泌尿器の病気が発症しやすい動物です。
中でも血尿は病気のサインとして、非常に多く見られます。
今回は「猫の血尿」にスポットを当てて、多くの飼い主の方が疑問に思うことなど詳しく解説していきます。
目次
血尿とは?
実は、真っ赤な尿が見られたから「血尿」であるとは限りません。
まずは血尿の定義から見ていきましょう。
血尿の定義
血尿とは、尿中に赤血球が出現している状態を言います。
肉眼的に赤色を呈していなくても、顕微鏡で確認して赤血球が基準値を超えて出現していれば血尿となります。
「赤い尿」は血尿??
赤い尿のことを医学用語では「赤色尿(せきしょくにょう)」と言います。
赤色尿の原因には、血尿、ヘモグロビン尿(血色素尿)、ミオグロビン尿があり、赤い色をしているだけでは血尿とは言えませんし、尿検査をしないと血尿と診断することはできません。
ヘモグロビン尿(血色素尿)とは?
ヘモグロビンとは赤血球の中に含まれる赤色をした色素で、これが尿中に異常に多く出現している状態をヘモグロビン尿と言います。
ヘモグロビン尿は「血管内溶血」といって赤血球が血管内で破壊されることによって見られる病態を意味していて、血尿のように尿中に赤血球は出現しません。
ヘモグロビン尿を起こす病気には、タマネギ中毒などの毒物によるもの、レプトスピラ病という細菌感染症などで見られます。
ミオグロビン尿とは?
ミオグロビンは筋肉の中に含まれる赤色をした色素で、これが尿中に出現している状態をミオグロビン尿と言います。
ミオグロビン尿を起こす病気には、横紋筋融解症、長時間の痙攣発作、筋肉の挫傷などがあります。
血尿を起こす病気にはどんなものがある?
血尿を引き起こしているということは、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のどこかに異常が起きていると考えられます。
細菌性膀胱炎
細菌感染により膀胱に炎症が起こる病気を細菌性膀胱炎と言います。
健康な猫は濃い尿をすることで細菌が繁殖しにくい環境を保っていますが、慢性腎不全や糖尿病では尿が薄くなるため、細菌性膀胱炎になるリスクが高くなります。
細菌性膀胱炎になると、血尿の他、排尿を我慢できないためトイレ以外の場所で排尿してしまう、何度もトイレに行く(頻尿)、トイレに座っている時間が長いが少ししか尿が出ない、などの症状が出ます。
また、細菌性膀胱炎を放っておくと、尿管を伝って腎臓まで炎症が及び腎盂腎炎を起こすこともあります。
腎盂腎炎になると発熱や元気食欲低下などの全身的な症状も見られます。
治療には抗生剤の投与が必要です。
特発性膀胱炎
特発性とは「原因不明」を意味し、特発性膀胱炎とは尿路結石や細菌感染などのハッキリとした原因わからない膀胱炎のことを言います。
この病気は猫の下部尿路疾患の実に約60%を占めると言われており、再発を繰り返すことも多いです。
原因は特定できていないのですが、環境の変化やストレスが影響しているのではないかと考えられています。
ストレスの具体例として、同居している動物に対するストレス、家族の留守や来客、運動不足、トイレの位置や猫砂の変化、通院のストレスなどが挙げられます。
症状としては、細菌性膀胱炎とほとんど同じであるため、鑑別するには尿検査を受ける必要があり、治療法としては抗炎症剤の内服に加え、猫のストレスの原因となりそうなことを少なくすることになります。
尿路結石
血尿を引き起こす尿路結石には、膀胱結石と尿道結石があります。
膀胱結石
猫の尿路結石には、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウムの主に2つの種類に分かれ、若い猫ではストルバイト結石、高齢猫ではシュウ酸カルシウム結石の発生が多く見られます。
膀胱結石が出来ると、血尿や頻尿、排尿を我慢できないためトイレ以外の場所で排尿してしまう、排尿後の砂やペットシーツがキラキラしている(結晶尿)などの症状が見られます。
また結石ができると細菌感染の温床になりやすく、細菌性膀胱炎を併発することもあります。
ストルバイト結石であれば療法食への変更で、ある程度の溶解が期待できますがサイズが大きくなってしまうと溶解しきれない、もしくは溶解に時間がかかり症状が長引くことがあるため、外科手術による摘出を検討します。
一方、シュウ酸カルシウム結石であった場合、餌の変更は予防的な効果しかないですので、外科手術による摘出を行います。
尿道結石
尿道結石は、膀胱結石が流れて尿道を塞いでしまう病気です。
雄猫は尿道が細くなっているため、尿道結石できると排尿困難となり、何度もトイレに行くのに尿が出ないかポタポタとしか尿がでない、お尻が赤い尿で汚れている、吐き気がでる、元気や食欲がない、などの症状が出ます。
この状態を尿道閉塞もしくは尿閉と言い、長い間放置すると急性腎不全に陥り命が危険にさらされるため、疑わしい症状が出た場合はできるだけ早く動物病院を受診する必要があります。
治療法としては、水圧で尿道内の結石を膀胱へ戻すことを試みますが、どうしても尿道から移動しない場合は会陰尿道造瘻術(えいんにょうどうぞうろうじゅつ)といって、尿道の一部を切除し広げる手術を行います。
⇒猫の尿道結石の原因や症状や治療法は?手術や費用についても解説
腎臓や膀胱の腫瘍
腎臓や膀胱に腫瘍が出来ると、腫瘍からじわじわと出血することによって血尿を引き起こすことがあります。
腎臓に発生する腫瘍の中で多いのがリンパ腫、次いで腺癌、移行上皮癌などが見られます。
また猫では膀胱の腫瘍の発生頻度は少ないですが、移行上皮癌という癌が発生することがあります。
これらの腫瘍になると、血尿以外にも元気食欲の低下、痩せてきたなどの症状が見られることがあります。
治療としては、腫瘍の種類や発生している場所、進行度によって選択肢は異なりますが、外科手術や抗癌剤の投与を検討します。
「猫下部尿路疾患(FLUTD)」ってどんな病気?
キャットフードのパッケージを見てみると「猫下部尿路疾患(FLUTD)に配慮しています」と表記されている商品がありますよね。
猫下部尿路疾患がどんな病気かを知らずに「なんとなく体に良さそうな気がするから」と選んでいる方も多いのではないでしょうか?
猫下部尿路疾患の定義
猫下部尿路疾患とは、下部尿路(膀胱から尿道)におこる病気の総称で、先ほど述べた細菌性膀胱炎、特発性膀胱炎、尿路結石(膀胱結石、尿道結石)などを一括りにした言葉です。
猫は他の動物に比べて下部尿路にさまざまな症状が出やすく、尿路結石と細菌性膀胱炎の併発など病態も複雑化しやすいため便宜的にこのように呼んでいます。
⇒猫の下部尿路疾患ってどんな病気?症状や治療、フード(餌)について解説
表記のあるフードの特徴は?
パッケージに「猫下部尿路疾患配慮しています」と記載されているフードは、結石の作りにくい尿pHになるように計算されていたり、結石の成分となるミネラル量を調整してあったり、炎症を抑える効果のある抗酸化成分を配合してあるなどの特徴があります。
特に若い猫では猫下部尿路疾患の発生リスクが高くなりますので、こういった製品を選ぶとよいでしょう。
後述の「血尿を防ぐにはどうしたらよい?」のセクションも参照して下さい。
メスとオスで血尿に違いはある?
血尿が見られた猫がメスなのかオスなのかで、何か注意しなければいけない点は異なるのでしょうか?
腎不全のリスクが高いのはオス!
血尿を引き起こす原因はオスもメスも同じですが、尿路結石もしくは結晶によって尿道閉塞を起こすことが多いのは圧倒的にオスになります。
メス猫で尿閉になることは全くないとは言えませんが、極めて稀です。
オス猫が血尿している場合、尿道閉塞・尿閉を起こし腎不全にならないよう、注意深く観察する必要があります。
未避妊メスなら膣や子宮からの出血の可能性も?
尿道は膣に開口しているため、子宮や膣で出血している場合も尿に血が混ざってしまい血尿と間違われることがあります。
もし飼い猫がメスで、かつ避妊手術をしていない場合、尿に血が混ざっているが頻尿がなかったり、陰部からおりものが出ていたりする場合は、子宮蓄膿症などの病気を起こしている可能性も考えなくてはいけません。
こんな血尿の症状が出た!どうしたらいい?
こんな血尿が見られたらどう対処すべきか?という疑問についてお答えします。
元気がある猫の血尿
猫が1回だけ血尿したが自然治癒した。ストレスが原因?
特発性膀胱炎であった場合、ストレスで血尿を起こすことがあります。
ただそれは細菌感染も尿路結石も否定されないと特発性膀胱炎と診断することはできません。
また、肉眼的に尿が赤色ではなくても顕微鏡でみると血尿と判断されることがあります。
繰り返すようなら一度動物病院を受診しましょう。
高齢の猫が血尿した。やっぱりストレス?
もちろん特発性膀胱炎の可能性はありますが、高齢猫の血尿には細菌感染や腫瘍、シュウ酸カルシウム結石が原因で起こっていることも否定出来ません。
血尿が続くなら一度動物病院を受診しましょう。
いつもと様子の違う血尿
猫の尿が赤くポタポタしか出ず、しきりにペニスを舐めている。よくみるとペニスがずっとでている
尿道に閉塞物がある時に見られる症状です。
放っておくと腎不全になってしまう危険性が高いですので、とにかく早く動物病院を受診しましょう。
血尿をしてから元気がなく、嘔吐も見られている。排尿するときに痛そうに鳴いている
嘔吐が見られていることから、尿道閉塞の結果腎不全を起こしている可能性があります。
すぐに動物病院を受診して下さい。
治療中の血尿が良くならない!
抗生剤を飲んでいるのに血尿が良くならない
処方した抗生剤が確認された細菌に対して有効でないか、もしくは有効である抗生剤を飲んでいたが、治療中に別の細菌が増えてしまった(菌交代症という)可能性があります。
このケースでは再度動物病院を受診し、尿の細菌培養検査を受けて頂く必要があります。
もし初めに動物病院で尿検査を受けていないけれど念のため抗生剤を処方されたというケースなら、細菌性膀胱炎ではなく特発性膀胱炎であった可能性も考えられます。
その場合は改めて尿検査の実施と治療法の変更が必要です。
ストルバイト結晶と診断されて餌を変えているが血尿が良くならない
ストルバイト結晶でもフードの効果を得るためには最低でも数週間は継続する必要があります。
また、猫下部尿路疾患は原因が一つとは限らず、初めはストルバイト結石で血尿していたけど、後から特発性膀胱炎を引き起こした可能性もあります。
一度動物病院で尿検査を実施してもらい、まだ結晶が見られるか確認してもらいましょう。
血尿か迷う症状とは?
下痢をしてから何度もトイレに行く。今度はポタポタと血尿のような跡があった
このケースに見られた血の跡は、おそらく血尿ではなく下痢が酷く腸管から出血しているのではないかと推察します。
酷い下痢が続き食欲も低下しているなら、動物病院を受診した方がよいでしょう。
⇒獣医師が教える猫の下痢の原因と対処法まとめ。飼い主必見です
血尿を防ぐにはどうしたらよい?
どんな病気も治療より予防策をとることが大切ですね。
フードの見直しを!
尿路結石や結晶の発生を予防するためには、猫に毎日与える餌を見直すことが重要です。
すでに尿路結石が出来ている、もしくは結石の元となる結晶が見られている猫には療法食を与えましょう。
発生している結石によって商品が異なりますので注意して選んで下さいね。
様々な療法食が販売されていますが、中でも人気の商品は以下の通りです。
・ストルバイト、シュウ酸カルシウム結石の予防:ロイヤルカナン pHコントロールゼロ、ヒルズ プリスクリプションダイエット c/d マルチケア
・ストルバイト結石のみの予防:エランコジャパン ドクターズケア ストルバイトケア、ヒルズ プリスクリプションダイエット s/d
・シュウ酸カルシウム結石のみ予防:ロイヤルカナン 腎臓サポート
もし今まで尿路結石を指摘されたことがなくても、若い猫はストルバイト結石のリスクがありますので、これらのメーカーの準療法食や「猫下部尿路疾患に配慮された」一般食を選択すると良いでしょう。
また療法食を食べ続けているけどしばらく血尿などの症状が落ち着いているということなら、準療法食や一般食に切り替えもよいか獣医師に相談してみても良いでしょう。
いつでも新鮮な水を!
結石の種類に関わらず、飲水量の増加は結石発生のリスクを減らします。
いつでも新鮮な水を飲めるように家の複数箇所に水飲み場を設置するようにしましょう。
トイレをキレイに!
猫はきれい好きな動物なので、トイレが汚れていると排尿を我慢することも多いです。
トイレは適切な数を用意し(目安は猫の飼育数プラス1個)、汚れたらこまめに掃除してあげることをおすすめします。
室内猫にはストレス発散を!
猫の居心地のよい隠れ場所を作ったり、ストレス発散のためにキャットタワーや爪研ぎ、おもちゃを与えたりすることも重要です。
手の空いたときには、猫とのコミュニケーションの時間を作ってあげましょう。
さいごに
猫には下部尿路の病気が非常に多いので、数ある予防策の中でも食事選びは重要です。
療法食というと「まずくて猫が食べないのではないか?」と心配される方もいらっしゃいますが、最近は猫が喜んで食べてくれるような商品が沢山でてきていますよ。
また「すぐに飽きちゃうのではないか?」と心配される声もありますが、療法食内でいろいろな商品をローテションするのも問題ありません。
もしどうしても療法食を食べなくて困っているなら、無理してあげてもお互い苦痛ですから、準療法食や結石に配慮された一般食を与えてもよいでしょう。
沢山ありすぎてどれを買ったらいいか悩ましいときは、サンプルを用意してくれることもありますので、是非動物病院へご相談して
「動物病院に連れていきたいけど治療費はどのくらいかかるんだろう?」
「愛猫の病気を治してあげたいけど高額費用を支払う余裕がない…」
という飼い主さんはとても多いです。
動物病院で治療する場合、病気によっては10万円以上かかってしまう場合もあります。
動物病院で治療すれば助かった命は実に多いです。
経済的な問題で愛猫の寿命を縮めないためにも愛猫が元気なうちにペット保険に加入することが大事になります。
でも「ペット保険っていうけど、どういう保険があるの?」という疑問も出てくるかと思います。
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